教員志望学生を対象とした天文分野の理解度や興味・関心に関する継続調査:10 年間の変遷

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タイトル別名
  • Continuous research on understanding and interests in astronomy for prospective teacher students: Changes over the decade

抄録

本論文では,将来教員になる大学生の天文分野の基本的な知識・理解度や認識,興味の変化などを調査 することを目的として,教員養成系である教育学部生(3432名)を対象に,天文分野の興味関心や小中学 校で学ぶ天文分野の理解度調査を,2013年度から2023年度まで継続的に実施した。その結果,教育学部, 及び理科専修の学生の理科好きの割合は8,9割前後で推移しており,ここ十年における明確な理科離れ・ 理科嫌いの傾向は見られないことが明らかになった。日周運動・年周運動等の「天体の動き」,及び太陽や 月など「天体の分類」については知識の定着率が比較的高い一方で,「天体の大きさ」や「天体の光り方」 等の天体の物理的特徴を扱う事項については理解度が低いことがわかった。理科・天文への興味関心の度 合い,望遠鏡で天体観測・観望を行なった経験,天の川の観望経験等の天文に関する直接的体験や高校地 学分野の履修状況などを考慮した分析から,全体の正答率が高い「天体の動き」や「天体の分類」には大 きな違いはないが,「天体の大きさ」「天体の光り方」や全問正解の割合には,それぞれの経験/履修内容に よる違いが見られた。回答者の属性,経験,天文分野の理解度についてロジスティック回帰分析を行なっ た結果,天文に関する直接的な体験や興味・関心,高等学校で地学関連を学ぶこと等が知識や理解度へ影 響を及ぼすことが示唆された。さらに,将来小中高の理科教員を志望している理科専修の学生について, 1年次に加えて,2,3,4年次に調査を行なった結果を比較したところ,入学時から卒業前までで理解度が 向上していることが明らかになった。多くの学生にとって,高等学校において地学関連の科目を学ぶ機会 がない現在の状況を考慮すると,天文学を学ぶ最後の機会となり得る大学で学ぶことは,教員として必要 な科学的知識,及び科学的素養を育成できる可能性が示唆された。 以上の結果を踏まえると,教員養成系の大学生について天文学の基本的な理解度を向上し,定着させ るためには,(1) 天体望遠鏡等を用いた観望・観測体験, (2) 高等学校での「地学・地学基礎」の履修, (3)大学での天体観測を活用した教育が望まれる。

収録刊行物

  • Stars and Galaxies

    Stars and Galaxies 6 (0), 8-, 2023-12-31

    兵庫県立大学自然・環境科学研究所天文科学センター

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017300968770944
  • DOI
    10.32231/starsandgalaxies.6.0_8
  • ISSN
    2434270X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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