腰痛・歩行困難・下腿浮腫の診断に難渋した症例から

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  • ヨウツウ ・ ホコウ コンナン ・ カタイ フシュ ノ シンダン ニ ナンジュウ シタ ショウレイ カラ

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抄録

浮腫・腰痛・歩行困難という複数の主訴で来院した高齢男性例から,興味深い病態診断に至った症例を紹介する。 病歴の聴取では,極端な偏食という生活歴が特徴的であった。 本例の浮腫は熱感・発赤を伴った両下腿浮腫であったがPETや生検でも血管炎の存在を認めず,MRIで両下腿静脈内に血栓を検出した。 凝固線溶系の精査から,プロトロンビン時間の延長とプロティンCの低下を認めた。 低栄養を背景に,ビタミンKの低下とさらにビタミンK依存性のプロティンC低下により凝固線溶系に異常をきたし,深部静脈血栓症を発症したと考えられた。 同時に四肢末端の知覚異常を認めたが脊髄画像所見に異常なく,ビタンB12 欠乏によるニューロバチーと考えられた。さらに,骨代謝関連検査では低カルシウム・低リン血症と副甲状腺ホルモンの上昇を認め,血中ビタミンD3 低値と骨粗鬆症の存在から,ビタミンD欠乏による骨軟化症に関連する腰痛症と考えられた。 メコバラミンとアルファカルシドールの投与にて,四肢知覚異常の軽快と骨代謝異常の改善を認めたが,静脈血栓に対してはワーファリン開始にて下腿発赤は消失したものの浮腫は残存し,静脈還流障害の影響が示唆された。総合的に病態を考慮すると,過度の偏食による種々のビタミン・栄養素の低下を惹起し,本例の多彩な主訴を呈したものと考えられた。

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