横領罪の委託信任関係に関する一考察‐最二小判令和 4 年 4 月 18 日刑集 76 巻 4 号 191 頁を素材として‐

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抄録

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本稿は，最二小判令和 4 年 4 月 18 日（刑集 76 巻 4 号 191 頁）を契機として，横領罪の「書かれざる構成要件」である「委託信任関係」について考察を行ったものである。まず，最高裁令和 4 年判決の内容を確認した。次に，上告審で争点となった①委託関係が成立するには，委託者に正当な権限が要求されるのか，②委託原因が保護に値するものでなくても横領罪が成立するのかについて，これまでの判例・学説を分析した。その結果，①所有者でない者から委託された場合であっても，委託信任関係を認めることは可能であるが，その場合に，所有者でない者からの委託があった場合に，無制限に委託信任関係を認めることは妥当ではないこと，②委託原因が，行政委託取締法規の趣旨からすると公序良俗に違反するとまではいえない場合は，委託信任関係を認めるべきであるが，行政刑罰が科されている場合，その委託は保護に値せず，横領罪の成立を認めるべきではないことが判明した。This report is an examination of the “entrustment fiduciary relationship,” which is an “unwritten constituent element” of the crime of embezzlement, based on the Supreme Court’s April 18, 2022 decision （Penal Code, Vol. 76, No. 4, p. 191）. First, the contents of the Supreme Court’s 2022 decision were reviewed. Next, I analyzed the precedents and theories that have been used to determine whether （1） the trustee must have legitimate authority in order to establish a relationship of entrustment, and （2） the crime of embezzlement can be committed even if the cause of entrustment is not worthy of protection, which were points of contention at the appellate court. As a result of my analysis, I found that （1） it is possible to recognize an entrustment fiduciary relationship even when the entrustment is made by a person who is not the owner, but in such cases, it is not appropriate to recognize an unlimited entrustment fiduciary relationship when the entrustment is made by a person who is not the owner, and （2） the cause of entrustment, for the purpose of the administrative entrustment control regulations However, if an administrative penalty is imposed, the entrustment is not worthy of protection and the establishment of the crime of embezzlement should be denied.

論文

identifier:JOS-13492012-1903

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