臍帯動脈瘤を認めた子宮内胎児死亡の1例

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  • A case of umbilical artery aneurysm

抄録

臍帯動脈瘤はまれな疾患ではあるが臍帯血流へ影響を与えることによって,胎児死亡を引き起 こしうる病態である.われわれは臍帯の動脈瘤が死因となった可能性がある死産症例を経験した.症 例は30歳の1妊0産で自然妊娠であった.妊娠初期より近医で妊婦健診を行われ,妊娠35週より当院で の周産期管理を開始した.前医,当院での胎児超音波検査で明らかな異常所見はなかった.妊娠39週1 日に陣痛発来し当院を受診したが,胎児心拍を確認できず子宮内胎児死亡と診断した.促進分娩を実 施し,死産児および胎児付属物を娩出した.臍帯は2本の臍帯動脈と1本の臍帯静脈で構成されていた が,臍帯動脈に1.8cm大の腫瘤の形成を認めた.胎盤は580 gで血腫の付着はなく,臍帯は中央付着で あった.児は体重3166 g,身長51.5 cmの男児であり,明らかな外表奇形はなかった.臍帯・胎盤の病 理学的検索を実施したところ,2本の臍帯動脈の一方に動脈瘤を認め,内部に血栓を伴っていた.臍帯 動脈瘤に近接する臍帯静脈内部およびその血流の下流にも血栓を伴っていた.以上の所見から,臍帯 動脈瘤によって隣接する臍帯静脈の血流異常が引き起こされ,子宮内胎児死亡となった可能性が示唆 された.臍帯動脈瘤は18トリソミーや単一臍帯動脈との関連も示唆されているが,本症例は染色体検 査を行っていないものの児に18トリソミーを疑う所見はなく,臍帯も単一臍帯動脈ではなかった.臍 帯動脈瘤を妊娠中に認めた場合の管理方法は確立されていないが,分娩方法に関しては経腟分娩によ る臍帯へのストレスを防ぐため,帝王切開が選択される傾向にある.分娩時期は,妊娠週数や臍帯動 脈瘤の長径,児の他の合併奇形や胎児発育などを総合的に判断して,慎重に決定されることが求められる.〔産婦の進歩76(1):54―59,2024(令和6年2月)〕

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017500448688640
  • DOI
    10.11437/sanpunosinpo.76.54
  • ISSN
    13476742
    03708446
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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