日本の農林水産物・食品輸出と北九州空港の活用

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抄録

日本は第2次小泉内閣時代の2005 年以来,農林水産物・食品の輸出を農業振興の重要な柱としてきたが,2021年に輸出額は1兆円を超え,2022年には1 兆3,372億円に達した。しかし,その4割は食品が占め,国内産の農産物は全体の3割に満たない。品目でみた輸出額第1位はホタテ貝であり,第2位がウイスキー,第3位が牛肉,第4位がソース混合 調味料,第5位が清涼飲料水と続く。輸出先でみれば近年での第1位は中国であり,第2位は香港,第3位が米国,第4位が台湾,第5位がベトナムと,米国を除けば,アジア諸国への輸出が多い。  九州は農業生産額では全国の2割を占めるが,農林水産物・食品輸出額は2022年で1,464億円と全国の1割に過ぎない。輸出額のうち食品を含む農産物は47%で,水産物は38%,林産物は15%であり,九州の輸出は農産物の割合が小さく,水産物と林産物の比重が大きいことが特徴である。九州の農林水産物・食品の輸出先は,中国,米国,香港,台 湾,韓国がベスト5であり,6位以下にもベトナム,タイ,カンボジア,フィリピンとアジア諸国が並ぶ。  九州は地理的にアジア諸国に近く,農林水産物・食品の輸出成長の可能性が大きい。特 に,北九州空港を活用した航空貨物による輸出は検討に値する。国土交通政策研究所が行った航空貨物による農林水産物・食品輸出額の調査によれば,北九州空港には福岡県や東京都から農産物が集められ,韓国の仁川空港等を経て,ロシアや中国に輸出されている。福岡空港からの輸出も九州各地のみならず,東京都や山口県から集められアジア各地に空輸されている。  農産物の航空貨物による輸出としては,新型コロナ前に展開した沖縄・那覇空港における国際物流ハブ機能を活用したアジアへの農水産物輸出の例がある。ヤマト運輸が全日空と連携して行った当時の国際クール宅急便の展開は,ヤマト運輸が日本航空と提携し貨物専用機を2024年4月から運航することが決まっている北九州空港にとって大いに参考となる。北九州空港は九州唯一のフレーター空港として選ばれ,首都圏と九州を結ぶだけでなく,将来的には全国各地の空港とネットワークで結び,農産物輸出においてもアジアへのゲートウェイとして機能することが期待される。本稿では,そのための条件と解決すべき課題について検討した。

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  • CRID
    1390017533217962624
  • DOI
    10.20787/agishiten.34.2_1
  • ISSN
    1348091X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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