左室に腫瘤を形成した肺癌心筋転移の1例

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タイトル別名
  • A Case of the Left Ventricular Tumor Induced by Lung Cancer with Myocardial Metastasis
  • サシツ ニ シュリュウ オ ケイセイ シタ ハイガン シンキン テンイ ノ 1レイ

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抄録

<p>症例は80代女性.高血圧症などにより近医通院中の202X年7月に胸部X線検査で右下肺に陰影を認めたが,高齢のため精査加療を行わず経過観察されていた.翌年11月に血痰や全身倦怠感を認め,CT検査で肺腫瘍が疑われ,当院内科へ紹介となった.経胸壁心エコー図検査では左室壁運動は良好で,左室後壁側の中部~心尖部に心腔へ突出する3×2 cmの腫瘤を認めた.腫瘤は表面不整,輝度は等輝度で一部低輝度部分が混在していた.入院後,補液や抗菌薬投与による治療を開始したが,効果はなく第9病日に多臓器不全のため永眠となった.死後3時間後に剖検が行われ,右肺下葉に8×7 cm大の扁平上皮癌が認められた.また左肺,心,肝,左腎,右副腎,小腸,皮下,骨髄,傍大動脈リンパ節に転移がみられた.心臓への転移巣は基部から心尖部まで多発してみられ,特に心尖部に大きな腫瘤を形成していた.肺癌における心臓転移の多くは心膜への転移であり,心筋転移は心臓転移全体の約10%を占めるに過ぎない.心臓転移の超音波所見としては,心膜転移では心囊液貯留がよくみられる.一方,心筋転移の場合は局所的な壁肥厚や壁運動低下が特徴とされているが,本症例はこれらの所見はみられなかった.心臓転移は臨床症状に乏しく,発見が遅れることも少なくないため,経胸壁心エコー図検査による観察に際しては本症例のように腫瘤形成を主体とすることも念頭に置き検査を行う必要がある.</p>

収録刊行物

  • 超音波検査技術

    超音波検査技術 49 (1), 28-35, 2024-02-01

    一般社団法人 日本超音波検査学会

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