リン酸化セルロースナノファイバーの特徴と開発状況

  • 佐藤 未歩
    王子ホールディングス イノベーション推進本部 CNF創造センター

書誌事項

タイトル別名
  • Features and Developments of Phosphorylated Cellulose Nanofibers

抄録

地球規模の環境問題への関心が高まる中,カーボンニュートラルで再生可能な資源である木質バイオマス,なかでもセルロースナノファイバー(CNF)の多面的な利用が期待されている。当社ではリン酸エステル化CNF(以下,リン酸化CNF)の用途開発を進め,天然ゴム,ポリカーボネート(PC),ポリプロピレン(PP)との複合材料を開発した。<br>当社が開発したリン酸化CNFは完全ナノ化されており,その水分散液は高透明かつ高粘性でpH 3-11という幅広い液性でも安定している。また,リン酸化CNFの水分散液よりCNFシートを形成でき,このシートは高透明かつ高強度で熱寸法安定性にも優れる。以上の特徴を生かし,新規の複合材料の開発を進めている。天然ゴムは一般的にカーボンブラックにより補強されるが,伸度低下が課題である。CNFは,伸度を維持しながらカーボンブラックと同等の補強効果が得られ,オールバイオ材料としての利用が期待される。PCとCNFシートを積層すると,曲げ弾性率が向上し,線熱膨張係数が低減した。PCの透明性は維持されており,ガラスの代替品としての利用が期待される。<br>また,PPを自社独自技術を活用してパルプ繊維と混合すると,課題である脆化が低減され,優れた曲げ弾性率とシャルピー衝撃度をもつ複合材が得られた。この複合材をCNFシートで強化することで曲げ弾性率がより向上した。PPとパルプ繊維の複合材については,射出成形用ペレット開発にも成功している。弊社は,開発した複合材料のサンプルワークを進め,引き続きリン酸化CNFの特徴を活かしながら,セルロース系材料の複合材への利用を積極的に進める。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 78 (2), 103-106, 2024

    紙パルプ技術協会

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