難溶性物質のin vitro毒性試験に適用可能な新規溶媒の開発
書誌事項
- タイトル別名
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- Development of new solvents applicable to in vitro toxicity tests of insoluble substances
抄録
<p>【背景と目的】持続可能性、経済性、及びハイスル―プット性などの観点から幅広い用量域及び多様な化合物に適用可能なin vitro毒性試験の重要性が高まっている。上記の試験にて、多くの場合は水系に被験物質を処理するが、溶解性の観点から試験への適用が困難な事例が認められる。ライフサイエンス分野にて汎用されている有機溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)であるが、低濃度(1-2%)においても生細胞の細胞周期に影響を与える。そこで、生体適合性が高い新規溶媒の開発を目的とした溶媒スクリーニング試験、及びその安全性評価を実施することとした。水やDMSOへの溶解度が非常に低いセルロースを溶解可能な溶媒として、双性イオン液体(ZIL)が報告されているため(Commun. Chem., 3, 163 (2020))、スクリーニング対象として注目し、以下の試験を実施した。【方法】水、及びDMSOのいずれにも低い溶解性を示した食品関連物質を0.1、1、10%(w/w)の濃度でZILに溶解させるスクリーニング試験を実施した。DMSOと比較し、優位性が認められたZILを選定し、Ames試験、及びヒト肝癌由来細胞株を用いた肝細胞毒性試験を実施した。【結果】金沢大学理工研究域・黒田研究室にて開発されたヒスチジン類似構造を持つZILが一部の食品関連物質に対して高い溶解性を有することが確認された。上記のZILはAmes試験にて陰性を示し、肝細胞毒性試験においてDMSOと比較し低毒性であることが確認された。【結論】選定したZILは食品関連物質の新規溶媒として、溶解性の観点から有用であることを明らかにした。変異原性を有さないことから、遺伝毒性試験への適用が期待される。また、肝細胞に処理した際にDMSOと比較して生体適合性が高いことから、生細胞を用いる各種試験の新規溶媒としての有用性が示唆された。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 50.1 (0), P1-008E-, 2023
日本毒性学会