メチル水銀による脂肪滴形成とアディポカイン発現促進作用に対するオートファジーの影響

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タイトル別名
  • Effect of autophagy on methylmercury-induced lipid droplet formation and adipokine expression in 3T3-L1 cells

抄録

<p>メチル水銀(MeHg)は水俣病の原因物質として知られる中枢神経障害を惹起する環境汚染物質である。我々は、変性タンパク質等の分解系であるオートファジーとMeHgの相互作用という視点から、低濃度MeHgに対する防御機構の解明に取り組んできた。本研究では、MeHgによる脂肪細胞への影響を明らかにする目的で、脂肪細胞の分化に対するMeHgの影響とオートファジーの関与について検討した。3T3-L1細胞に分化誘導剤を処理し、2、4、6、8日後における細胞内の脂肪滴をOil Red Oを用いて染色したところ、分化誘導剤処理4日後から脂肪滴が顕著に増加し、8日にかけて脂肪滴のサイズが増大した。MeHg(0.5 µM)を2日毎に加えた細胞は、対称群と比較して脂肪滴の数が多かった。LipiDye IIを用いて脂肪滴を染色した結果においても、1細胞あたりの脂肪滴の数は対称群よりMeHg処理群で有意に多かった。一方、直径10 µm以上の大きな脂肪滴を有する細胞の数は対象群よりMeHg処理群で減少しており、小さな脂肪滴が多く観察された。また、MeHg処理群は対象群と比較してPPARG、ADIPOQ、FABP4等のアディポカインの発現が有意に高く、特に脂肪細胞分化後期(Day 6-8)において顕著であった。さらに、オートファジー阻害剤であるクロロキンを脂肪細胞分化の初期(Day 0-2)に処理すると、MeHgによるアディポカインの発現の増加が顕著に抑制したが、後期(Day 6-8)では発現抑制効果は僅かだった。以上の結果から、MeHgが脂肪滴形成に影響を及ぼすこと、脂肪細胞分化を促進することが明らかとなった。また、脂肪細胞分化の初期におけるオートファジーが脂肪細胞分化に必要であることが示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017920607921664
  • DOI
    10.14869/toxpt.50.1.0_p2-150
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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