ジフェニルアルシン酸および関連ヒ素化合物によるラット小脳由来培養アストロサイトの異常活性化についての構造毒性相関解析
書誌事項
- タイトル別名
-
- Structure-toxicity relationship analyses in inorganic and organic arsenic compounds-induced aberrant astrocyte activation
抄録
<p>ジフェニルアルシン酸(DPAA)は、2003年茨城県神栖町(当時)の井戸水ヒ素汚染事故における主な原因物質である。DPAAは脳内の標的細胞であるアストロサイトに、濃度・時間依存的な細胞増殖亢進とそれに続く細胞死を引き起こし、10 µM の濃度で96時間ばく露するとMAPキナーゼ(p38MAPK、SAPK/JNK、ERK1/2)の活性化、および転写因子(CREB、c-Jun、c-Fos)の活性化、そして酸化ストレス応答因子(Nrf2、HO-1、Hsp70)の発現誘導といった異常活性化を引き起こす。本研究では、亜ヒ酸(iAs3)とヒ酸(iAs5)、そしてDPAAの代謝産物と考えられているフェニルメチルアルシン酸(PMAA)およびジメチルアルシン酸(DMAA)による影響を評価し、DPAAと比較することでアストロサイト異常活性化におけるDPAAの特殊性を評価した。まず、iAs3、iAs5にばく露したところ、iAs3またはiAs5による細胞増殖亢進はみられず、iAs3の細胞毒性はDPAAと同等であったが、iAs5の細胞毒性は100 µMでもみられなかった。DPAA(10 µM)、iAs3(10または20 µM)、iAs5(10または100 µM)ばく露による異常活性化の程度については、iAs5 << iAs3 < DPAAであった。また、PMAA、DMAAにばく露したところ、PMAAは二峰性の細胞毒性を示し、10 µM程度と100 µMのばく露により細胞生存率を低下させたが、DMAAは100 µMでも細胞毒性を示さなかった。DPAA(10 µM)、PMAA(10 µM)、DMAA(10 µM)ばく露による異常活性化については、DMAA <<< PMAA < DPAAであった。以上の結果は、アストロサイトの異常活性化はヒ素化合物の中でもDPAAに特異的なものであることを示唆する。</p>
収録刊行物
-
- 日本毒性学会学術年会
-
日本毒性学会学術年会 50.1 (0), P2-149-, 2023
日本毒性学会