リードアクロスによる化学物質の非遺伝毒性発がん性予測におけるインビトロ試験データの有用性
書誌事項
- タイトル別名
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- Utility of <i>in vitro</i> assay data in predicting non-genotoxic carcinogenicity of chemicals by read-across
抄録
<p>[背景]現在、化学物質の非遺伝毒性発がんは、主にラットの2年間発がん性試験により評価されているが、発がん機序の複雑さ故に発がん性試験の代替法開発は進んでいない。そこで本研究では、インビトロ試験結果及び分子記述子を用いたリードアクロスによる非遺伝毒性発がん性予測手法の確立を目的とした。[方法及び結果]食品安全委員会が公表している農薬評価書の2年間ラット発がん性試験の結果から、がんの発症頻度が高い9臓器(肝臓、甲状腺、精巣、子宮、卵巣、乳腺、鼻腔、胃、膀胱/尿道)のいずれかで良性又は悪性腫瘍を起こす80農薬、並びに発がん関連所見を認めない46農薬を選出した。これら126物質について、HepG2細胞を用いた細胞傷害性試験(LDH放出、細胞内ATPレベル、細胞内GSHレベル)並びに異物応答性核内受容体(AHR、PXR、PPARα、RXRα)のレポーターアッセイを実施した。Fisherの正確確率検定により発がん性と試験結果の関連性を解析したところ、甲状腺がんとPXR活性化、精巣がんとAHR活性化、胃がんと細胞内GSHレベル変化、膀胱/尿道がんとAHR活性化に有意な関連性が認められた。次いで、これら4種のがんに着目し、計算可能な2106種のalvaDesc(alvascience社)分子記述子を利用して物質間のユークリッド距離を計算し、各被験物質について一定距離内に含まれる近傍物質から被験物質の発がん性を予測した。その結果、いずれのがんにおいても、記述子のみの予測結果(一致率:0.421~0.556)と比較し、関連性が見られたインビトロ試験結果で被験物質を層別化することで予測精度が向上した(一致率=0.571~0.921)。 [結論]非遺伝毒性発がん性のリードアクロスによる予測には、インビトロ試験結果による層別化が有用であることが示唆された。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 50.1 (0), P1-104S-, 2023
日本毒性学会