セルロースナノファイバー懸濁液の生物学的特性評価

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タイトル別名
  • Biological characterization of cellulose nanofibril suspensions

抄録

<p>セルロースナノファイバー(CNF)は、軽量で高強度、低熱膨張性等の特徴を有する新材料として期待される一方、繊維状で超微細な特性から、産業利用のため健康影響の懸念の払拭が望まれている。これまで我々は、異なる原料樹種と製法により作製されたCNFの細胞影響を調べた結果、有意な細胞生存能力の低下や、乳酸脱水素酵素の放出、活性酸素種産生の上昇が認められなかった一方、有意な炎症性サイトカイン産生や炎症に関わる遺伝子の高発現が認められたことを確認した。一方、CNFの原料樹種や製法、物理化学特性によりその程度が異なるものの、CNF懸濁液中に細菌やカビ、エンドトキシン、β-グルカンが検出された。このため、炎症性サイトカインの産生や炎症に関わる遺伝子の高発現は、CNFの直接的な影響と共に、CNF懸濁液に含まれる微生物や生体由来物質の関与が考えられた。そこで本研究では各種CNF懸濁液の生物学的特性を評価すると共に、抗生物質や高温処理、高圧蒸気滅菌を事例とし、CNF懸濁液の物理化学的特性を評価しながら、滅菌や不活化の手法としての有効性を検証した。この結果、抗生物質、高温処理、高圧蒸気滅菌はCNF懸濁液中の細菌やカビの滅菌に対して有効であったが、高温処理および高圧蒸気滅菌はCNF懸濁液の物理化学的特性を損ねることが明らかになった。また、抗生物質、高温処理、高圧蒸気滅菌はCNF懸濁液中のエンドトキシンおよびβ-グルカンを不活化できないことが分かった。CNFの生体影響を評価する際、被験材料の物理化学的特性のみならず生物学的特性を明らかにすることは重要である。本研究は、CNFの生体影響評価の手法の確立や、生体影響の解明のための有用な知見と考える。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017920607965312
  • DOI
    10.14869/toxpt.50.1.0_p2-155
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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