ジヒドロピラジンによる酸化ストレスの惹起と細胞障害:主要メイラード反応産物との比較
書誌事項
- タイトル別名
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- A comparative study of dihydropyrazine with other Maillard reaction products focusing on their abilities to induce oxidative stress
抄録
<p>メイラード反応によって生じる糖化産物は加齢とともに体内に蓄積され、がんや糖尿病などの疾患の原因となる。我々は、グルコサミンや5-アミノレブリン酸の二量体から形成されるジヒドロピラジン類に着目した研究を続けており、その一つである3-hydro-2,2,5,6-tetramethylpyrazine (DHP-3) は、細胞毒性作用だけでなく、抗炎症作用も示すことを報告した [1-3]。本研究では、DHP-3と主要なメイラード反応産物であるNε-(carboxymethyl)-L-lysine (CML) およびacrylamide とを比較し、DHP-3による細胞障害の機構解明を目指した。</p><p>HeLa細胞を用いて細胞毒性を評価したところ、DHP-3では LC50が532 μMと算出されたのに対し、acrylamideでは10 mM 付近でようやく毒性が認められた。一方、10 mM までの濃度では、CMLに毒性は認められなかった。次に、細胞内のreactive oxygen species (ROS) を解析したところ、ROS産生能はDHP-3 > acrylamide > CML の順であることが示唆された。さらに、レポーターアッセイおよびイムノブロットにより抗酸化ストレス経路の活性化を評価したところ、DHP-3でのみ一過的な活性化が認められた。 </p><p>以上の結果から、DHP-3はメイラード反応産物の中でも特に高い酸化ストレスの誘導能を有し、それが高い細胞毒性の要因となることが示唆された。</p><p>[1] Esaki M. et al., J. Toxicol. Sci., 45(7):401-409 (2020) </p><p>[2] Miyauchi Y. et al., J. Toxicol. Sci., 46(11): 509-514 (2021) </p><p>[3] Sawai M. et al., J. Toxicol. Sci., 47(9): 381-387 (2022)</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 50.1 (0), P3-223-, 2023
日本毒性学会