自動動画撮影カメラを用いた地表性ネズミ類の個体追跡サンプリング法の有用性

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  • Utility of sampling method for tracking terrestrial murids using automatic video cameras

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抄録

野生哺乳類の生態を理解するためには、その移動行動を把握することが重要である。大型及び中型の哺乳類では、近年のバイオロギング技術の発達に伴い、個体の移動経路を追跡することが可能である。しかしながら、ネズミ類等の齧歯類では多くの種が小型かつ夜行性であることから、その移動行動を野生状態で一定時間継続して観察することは困難である。そこで本研究では、自動動画撮影カメラ(以下、カメラ)を用いた個体追跡サンプリング法が、地表性小型齧歯類の行動観察に有用であるかを検討することを試みた。約9 m2 の範囲の地表(区画)を撮影可能なカメラを調査区内に10 台連ねて設置し、約90m2 の面積を撮影域として、ネズミ類の移動経路及び生息地の利用パターンを一定範囲で追跡観察することを試みた。調査は2022 年5 月~ 10 月の非積雪期に、北海道足寄町の九州大学北海道演習林内の天然生広葉樹林で行った。撮影された動画データでは、主にアカネズミ属及びヤチネズミ属を確認することができた。分析の結果、複数台のカメラによる区画をまたいだネズミ個体の連続追跡はできなかったが、各カメラの撮影範囲内において、ネズミ類によって繰り返し利用される移動経路の存在が確認された。また、移動行動の他にも堅果を摂食する行動、営巣用資源(落葉)・堅果の運搬行動、及び仔を運搬するような行動、さらに堅果の埋蔵行動を確認することができた。特に仔を運搬するような行動及び堅果の埋蔵行動(埋蔵した堅果の上を落葉で覆うような行動)は、これまでの野外観察からは報告されていないネズミ類の行動である。これらの結果から、直接観察が難しいネズミ類の調査へカメラの適用が進展することで、その行動学的情報をさらに収集することができる可能性が示された。

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