Abstract
本稿は,宮古語の多良間方言の韻律体系に焦点を当て,「名詞 nu 名詞 nu 名詞…」のように属格接語nuを介して名詞がいくつか連結した構造体(以下「修飾構造体」と呼ぶ)の韻律型の調査データを公開することを主な目的とする。また本稿では,多良間方言に「主要部にアクセントの核を付与する」という規則をたてた上で,その修飾構造体に階層的な韻律構造を想定し,その規則が下位の階層から上位の階層へと循環的に適用すると考えることで,その韻律型の解釈を試みる。さらに本稿では,「名詞1 nu 名詞2 nu 名詞3 nu 名詞4」のような4つの要素からなる修飾構造体では韻律構造の組み換えが起こり,それが「名詞1 nu 名詞2 nu」 と 「名詞3 nu 名詞4」のような2つの大きな韻律上の固まりに分断するという仮説を提示し,そのような組み換えを「韻律構造の再構築」と呼ぶ。そして多良間方言では,上述の「主要部に核を付与する」という規則は,その2つの韻律上の固まりにそれぞれ適用する,という仮説を提示することによって,このような4つの要素からなる修飾構造体の示す韻律型を説明する試みを行う。最後に本稿では,特にA型の語から開始する修飾構造体においては,そのピッチ変動の出現位置に,いくつかの異なるタイプのものが観察されるという記述結果を報告し,今後特にA型の語から開始する修飾構造体に的を絞って,多良間方言の韻律体系を引き続き調査していく必要があることを論じる。
Journal
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- 日琉諸語の記述・保存研究
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日琉諸語の記述・保存研究 2 19-49, 2024-03
国立国語研究所
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390017965044079360
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- IRDB
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- Allowed