看護師の医療機器をめぐる聴覚に関わる実践の人類学的研究

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タイトル別名
  • Anthropological Study of Nursing Practice by Hearing the Sounds of Medical Equipment
  • カンゴシ ノ イリョウ キキ ヲ メグル チョウカク ニ カカワル ジッセン ノ ジンルイ ガクテキ ケンキュウ

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抄録

人間学・人類学 論文

病棟は様々な音に満ちており、看護師はナースコールや医療機器のアラーム音など不特定多数の人やモノ、場所から発生する音を聞きとっている。看護師の感覚的な実践知は重要なものとして位置付けられながらも、研究の対象とされてこなかった。本稿は聴覚をめぐる実践に注目し、看護師は臨床現場の各所から聞こえる医療機器の音をどのように聞き取り、実践を展開しているのかを明らかにすることを目的とする。そのために、呼吸機能に関わる疾患を治療する病棟で働く3人の看護師を対象にインタビュー調査を行い、得られた語りを分析した。語りから、新人看護師は様々な場所から発生する音を聞くこと自体に困難さがあり、看護師は常に不特定多数の人や場所から発生する音を認識していることを指摘した。看護師は聞こえた音とその他の情報を分析的に組み立て、複合的に判断することで実践を展開しており、誰から、いつ、どこで発生する音なのかで音の意味は異なることが分かった。また、音は単一では知覚されておらず、様々な情報と組み合わせて判断されることが明らかとなった。看護師が聞いている音は目の前の個人ではなく病棟の中の不特定多数の人や場所から発生する音である。病棟で働く看護師の実践は患者との一対一の関係だけでは説明できない。本稿では、病棟の空間的な把握や看護の対象となる複合的な要素の絡まりを追求していく必要があることを示唆した。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 45 1-16, 2024-03-31

    大阪大学大学院人間科学研究科社会学・人間学・人類学研究室

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