断片のネットワーク――ロベール・ブレッソン『少女ムシェット』(1967)におけるイメージとナラティブの論理

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タイトル別名
  • The Network of Fragments: The Logic of Image and Narrative in Robert Bresson’s <i>Mouchette</i> (1967)

抄録

<p>本稿では、ロベール・ブレッソンの1967年の作品『少女ムシェット』に関して、ブレッソンの断片化と呼ばれる手法の機能を分析する。断片化とは、空間や身体の一部をクロースアップで捉えたショットの連鎖によって物語を構築していく手法を指すが、この断片化が『少女ムシェット』におけるイメージとナラティブの複雑な関係の中でどのような機能を担っているのかを明らかにすることが本稿の目的である。まず、ブレッソンの断片化を因果関係の断絶を無効化するものと考えるジャック・ランシエールの議論を概観していく。次いで、ランシエールの議論が不十分であることを、『少女ムシェット』のオープニングシークエンスの分析によって明らかにするとともに、断片化はむしろ、潜在的な無数の接続可能性を孕んだイメージを生み出し、因果関係を断絶する機能を持つと主張するジル・ドゥルーズの議論を導入する。断片化に関して、ナラティブの論理に重点を置くランシエールと、イメージの潜在性を重視するドゥルーズを対置させた上で、オープニングシークエンスにおけるショットと全体の物語の関係性を分析していくことによって、断片化が担っている機能を詳らかにしていく。最終的に、ブレッソンの断片化という手法は、最初はその意味が曖昧であったショットが全く別のショットと有機的に接続されることによって、意味を生み出していくような複雑なネットワークを構築していると結論づける。</p>

収録刊行物

  • 映像学

    映像学 111 (0), 95-115, 2024-02-25

    日本映像学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018120873618304
  • DOI
    10.18917/eizogaku.111.0_95
  • ISSN
    21896542
    02860279
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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