物語文学の語りとその超越

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タイトル別名
  • Beyond Telling Stories

抄録

<p>古典を「読むこと」、批評性への踏み出しの必要性がこれまで本誌誌上でも指摘されてきた。また、テーマである第三項理論を授業で真に生かすために、語り手を超える語りの問題を克服する教育道筋も求められている。本稿では、小学校教科書からくり返し取り上げられ、なじみのある古典教材からなしうること、古典教材そのものの理解に留まらず、近現代文学を扱う差異の「語り」と「語り手を超えるもの」への理解ともつなげる道筋を考える。</p><p>源氏物語の言説は、「作者」の分身的な話主から離れた「語り手」が設定され、竹取物語などの伝奇物語とはまったく異なる質の物語となっている。「語り手(群)」が複数設定されており、ハナシとハナシの相関関係(≒〈機能としての語り〉)の水準の読みに読者をいざなう。これを、かなで書かれたテクストの始まりである竹取物語から、伊勢物語、土佐日記、蜻蛉日記、和泉式部日記など、それぞれの語りの特質の言説史的展開を追い、授業で捉える端緒を示す。</p><p>〈語り―語られる〉相関のメタレベルの把捉例としてまず夕顔巻を再読する。夕顔巻は、他者性を欠いた(自己化した)夕顔像にしか出会わない源氏の、閉じた自己同一性があぶり出す。さらに、主筋を担う語り手(紫の上系)と短編系の巻々の語り手のありようが相互に照らし合うしくみを示した。源氏物語は主筋のプロット、短編系のプロットだけを追うのでは分からないメタプロット、〈機能としての語り〉レベルを摑みやすいしくみを持つ。第三項を授業で生かすために必要な「語り」と「語りを超えるもの」を捉える実践に接続しうると考えている。</p>

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 68 (3), 27-37, 2019-03-10

    日本文学協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018130491129088
  • DOI
    10.20620/nihonbungaku.68.3_27
  • ISSN
    24241202
    03869903
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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