生命金属元素鉄の新たな役割と治療応用

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タイトル別名
  • Novel role of the biometal element iron in the development of therapeutic strategies

説明

<p>糖尿病は世界的に増加している。わが国でも患者数は増加しており,糖尿病が強く疑われる,もしくは糖尿病の可能性が否定できない糖尿病予備軍も含めるとさらにその数は多くなる。糖尿病は加齢とともに増加する1)ことから,高齢化社会の急速な進行も患者数増加の一因と考えられ,加齢性疾患ともいえる。肥満,インスリン抵抗性,高血圧,高脂血症のメタボリック症候群は糖尿病発症の高リスク因子であるが,これらを有した患者の増加も糖尿病患者の増加につながっていると考えられる。徳島県では,平成15年よりほぼ毎年のように糖尿病死亡率全国ワースト1位が続いていた。そのため「糖尿病緊急事態宣言」を行い,県・市・医師会がさまざまな糖尿病対策に取り組み,県民の意識を高めるなど一丸となった努力の結果,令和2年はワースト5位,令和3年はワースト13位と徐々に改善してきている2)。</p><p> 糖尿病患者は3大合併症(神経障害・網膜症・腎症)に加え,心腎脳血管疾患3),がん4)を高率に合併する。これらの発症は生活の質の低下や健康寿命の短縮につながり,また医療費増加の一因ともなる。これまでの糖尿病の病態解明と治療法開発により,糖尿病患者の予後は以前に比べて改善している。しかし,糖尿病のさらなる克服を目指して,精力的に研究が継続されている。</p><p> 糖尿病は生活習慣病であり,カロリー摂取過多,運動不足,不規則な生活習慣が発症の原因として一般的によく知られている。実際,糖尿病治療は,まず生活習慣の改善を目的として運動療法と食事療法が行われる。</p><p> ヒトは食事からは生命活動に必要な栄養素を摂取している。栄養素は,三大栄養素であるタンパク質,炭水化物,脂質を含む多量栄養素と,ビタミン・ミネラル類を含む微量栄養素に大別される。更にミネラルは,多量ミネラル7種類(カルシウム,リン,カリウム,硫黄,塩素,ナトリウム,マグネシウム)と微量ミネラル9種類(鉄,亜鉛,銅,マンガン,クロム,ヨウ素,セレン,モリブデン,コバルト)に分類される。必須微量栄養素には7つの金属元素が含まれている。その中で,鉄は生体内において最も多く存在する金属元素である。鉄は,ヘモグロビンなどのヘムタンパク質合成,ミトコンドリアのエネルギー産生,酵素活性化,細胞増殖やアポトーシス,エネルギー代謝などさまざまな生理機能に関与して生体内恒常性を維持している(図1)。糖尿病の食事療法ではカロリー制限の範囲内で三大栄養素ならびに必要な微量栄養素中心にバランス良く摂取することが重要であるが,近年,微量金属栄養素の糖尿病への関与5)が明らかとなり,改めてその意義が注目されるようになっている。鉄も例外ではなく,糖尿病と関連する。また,糖尿病を含めた高血圧,高脂血症などメタボリック症候群の原因として肥満があるが,鉄と肥満も関連することが指摘されている。本稿では,必須微量栄養素の鉄と肥満・糖尿病の関係について,われわれの知見を含めて概説する。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018141480002944
  • DOI
    10.57444/shikokuactamedica.79.5.6_229
  • ISSN
    27583279
    00373699
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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