脳死両肺移植後の播種性ムーコル症

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抄録

<p>50歳代男性、間質性肺炎に対し脳死両肺移植後(32病日自宅退院)。退院後3ヶ月時に38度の発熱・咳嗽・労作時息切れを自覚し来院。炎症亢進とCTでの両側びまん性すりガラス影から感染や急性拒絶を疑われた。緊急入院後、直ちにMEPM・MINOを開始したが急速な酸素化増悪に対しステロイドパルス(mPSL500mg、day1-3)を併施、直後より酸素化の劇的な改善とすりガラス影消失を認めたため、day4よりPSL1mg/kg、以後漸減の方針とした。しかし、day10にCRP再上昇とCT上限局的な気管支拡張像が出現。感染併発を疑い入院時喀痰検査を問い合わせると接合菌類検出が報告された。無症状ながらL-AMBを開始したが、同日夕に突然の腹痛と腹部CTでfree airを指摘、横行結腸穿孔と診断され人工肛門造設が施行された。術後、腹痛・炎症所見の改善は乏しく、day16に消化管穿孔再発を認め緊急開腹術を施行。右側結腸に多数の壊死性穿孔を認め、同部位切除と回腸瘻造設が施行された。穿孔部には接合菌菌塊が確認され播種性ムーコル症と診断。以後、可能な限りの薬物治療を行うも改善傾向は一切見られず、気道粘膜壊死、菌血症に伴い、呼吸循環は急速に悪化、day22に永眠された。病理解剖では肺・横隔膜・心膜・胃・大腸・肝臓・脾臓・甲状腺・大脳に接合菌による壊死巣を認めた。播種性ムーコル症に対し為す術なく、文字通り悪夢の様な激烈な経過で失った症例である。特徴的所見と本症例から得た教訓を共有したい。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s267_2-s267_2, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

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