脳死下臓器提供における意思決定支援の一例~家族背景の複雑さと揺れ動く家族の気持ちに寄り添った意思決定支援~

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抄録

<p>【目的】脳死状態となり臓器提供に至った患者の家族は、身内が脳死状態に陥るという凄まじい衝撃とストレスの中で、臓器提供に関する決定をおこなう必要がある。今回は、事例の振り返りを通し、意思決定支援に必要なものとは何かを考察し報告する。【研究方法】 診療記録、看護記録から家族支援に焦点を当て、療養経過と看護実践および患者家族の反応について情報収集し分析した。【倫理的配慮】個人が特定されないように配慮し、看護部倫理審査会の承認を得た。【結果】A氏、交通事故にて集中治療室へ入室。父親は20年前よりネグレクトにて疎遠、母親も数年前に逝去、30代の兄と姉がキーパーソンとなった。当初、家族は、脳死下臓器提供を希望していたが、死亡日を決めるという責任の重さから、心停止後臓器提供に変更した。しかし、状態が増悪し提供断念の可能性が出てきた。院内コーディネーターとして、メディエーションスキルにある本質の思いを引き出すコミュニケーションスキルを使用し、「誰かの役に立って欲しい、どこかで生きていて欲しい」という家族の潜在的な思いを表出させたことで、家族が最終的に脳死下臓器提供の選択をすることができた。【考察】家族背景が複雑化する中、意思決定支援に必要なことは、1.正しい情報を聞き出すこと2.患者および患者家族の本質的な思いや意思を寄り添いながら引き出すことであり、ひいてはメディエーションスキルの修得が有用と考える。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s285_3-s285_3, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

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