先天性角化不全症に対して生体肺移植を施行した1例

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抄録

<p>先天性角化不全症(Dyskeratosis congentia: DKC)はテロメア長の維持機能の障害を背景とする稀な先天性造血不全症候群である.ほとんどの症例で造血不全を来し,造血幹細胞移植が必要となる.肺には時に肺線維症や肺動静脈瘻を伴う.症例は前医でDKCと診断され,6歳時に再生不良性貧血に対して非血縁者間骨髄移植を施行された.13歳時より労作時呼吸困難が出現し,肺の線維化,拘束性換気障害を認めたため,生体肺移植の適応評価について当科紹介となった.肺血流シンチグラフィで47.5%の高いシャント率を認め,肺線維症および多発性肺動静脈瘻による低酸素血症と診断し,3ヶ月後に両親をドナーとする生体肺移植を予定した.術前には酸素化能がさらに進行し,シャント率は62.7%に増加し,病勢の悪化は急速であった.両側生体肺移植術を施行し、移植後の経過は良好で,術後55日目に自宅退院し,就学可能となった.移植から3年半経過後,定期フォロー検査で右胸水貯留を認め,EBV感染による胸膜炎と診断し,免疫抑制剤の減量・リツキサン投与により加療を行った.術後5年経過した現在,著明な腹水,食道静脈瘤を認めており,原病による肝線維症に伴う門脈圧亢進に対して治療継続中である.DKC症例の急速な肺障害に対して生体肺移植は有用だが,肝障害を併発する可能性があり,慎重な経過観察が望まれる.</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s297_2-s297_2, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

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