腎移植患者の高度石灰化を伴う総腸骨動脈出血に対する血管テープ止血術

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抄録

<p>【緒言】腎移植患者は高齢化や糖尿病合併により動脈硬化症例が増加している。腎移植手術での動脈損傷への対応として縫合止血が一般的だが、動脈硬化による高度石灰化を伴う動脈壁では縫合不可能な場合がある。今回、腎移植の移植床作製時に総腸骨動脈を損傷し、高度石灰化のため縫合止血が不可能であったが、血管テープ結紮によって止血し得た症例を経験した。【症例】64歳男性。原発性アルドステロン症による高血圧からの腎硬化症と糖尿病性腎症による慢性腎不全のため血液透析歴13年9か月。脱感作療法として血漿交換4回後に妻をドナーとした血液型不適合腎移植を施行。総腸骨動静脈を剥離した際に動脈壁を損傷。高度石灰化のため複数種類の縫合針が貫通せず、タコシールを用いた圧迫でも出血の勢いは収まらず、最初はピンホール大の損傷が次第に5mm径まで拡大。高度石灰化はCTで腹部大動脈まで連続していて人工血管置換も不可能。そのため、血管結紮用テトロンテープ(ポリエステル製、5mm幅)3本を用い、損傷部位を被覆するようにして結紮したところ完全に止血し得て、このまま体内に残した。術後7日目からseromaが出現して血管テープからの漏出と考えられたが、1か月間のドレナージで消失した。【結語】高度石灰化のため動脈出血が縫合止血不可能な場合、血管テープ結紮法は簡便で迅速な止血が可能であり、最終手段として有用である。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s306_3-s306_3, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

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