特別支援学校の学校健診での予防活動の取り組み ~5年間介入による健診内容の報告~

DOI
  • 年神 翼
    医療法人菊野会 菊野病院 総合リハビリテーション部
  • 下畠 千恵
    医療法人菊野会 菊野病院 総合リハビリテーション部
  • 小山 尚宏
    医療法人菊野会 菊野病院 総合リハビリテーション部
  • 地原 千鶴
    医療法人菊野会 菊野病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 学校保健での健診は早期の運動器の健康に対する教育・指導や運動器疾患・障害の予防の発見の目的があり専門職の介入の必要性が言われている。また特別支援学校では障害の重度・重複化・多様化が進んでおり児童生徒の自立した社会参加には外部の専門家や関係機関との密接な連携を図った指導内容・方法が必要であるとされている。小児理学療法の終了目安は歩行獲得や就学が多い。当院でも就学を機に理学療法終了となることも多い。しかし、終了後に成長期を迎え脊柱側弯等運動器疾患が出現し理学療法を再開することも少なくない。そのため学校保健領域での予防的な介入の必要性を感じていた。2017年より当院リハビリテーション科医師が特別支援学校の校医となり医師より健診への帯同依頼があり介入に至った。今回2018年~ 2022年度の5年間の健診内容、理学療法士の取り組みや今後の課題について報告する。 </p> <p>【方法】</p> <p> 5年間で健診を受けた生徒のべ490名を対象とした。健診は年4回で1学期に3回 (小学部・中学部・高等部で1回ずつで全生徒を対象)、3学期に1回実施した。1学期は運動器健診の医師の補助 (関節可動域や姿勢・動作評価等)や評価結果に応じて生徒への運動指導を実施、運動指導はパンフレットを作成し事前に教員へ説明を行った。その際、運動器疾患等病院受診が推奨される生徒を医師とともに判断した。また3学期は健診後の状態確 認や困りごと等希望者に対しての健康相談であり生徒・保護者 ・教員の困り感への対応を行った。健診時は校医、養護教諭、担任教諭、理学療法士が参加し随時相談し意思決定を行った。 </p> <p>【結果】</p> <p> 5年間でのべ生徒490名中156名、全体の32%が病院受診促しとなった。受診促しの内容は脊柱側弯疑いが154名であった。受診促し者は小学部・中学部・高等部と学部間での著明な差はなかった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 脊柱側弯等運動器疾患の疑いにより病院受診を促した生徒が全体の32%と多く認めた。運動器疾患の早期発見や障がいの状態や特性に合わせた運動・生活指導等を早期に行うことができ、予防や重症化予防に繋げることができたと考える。脊柱側弯症は一般的に小学部高学年から中学生時期に多いが、学部間での著明な差はなかった。健診結果として小学部で片脚立位保持困難等姿勢の保持の苦手さ、高等部では指床間距離検査で床に指が着かないことやしゃがみ込み困難等体の硬さを指摘する生徒が多くいた。そのため、生徒ごとでの個別的な運動指導や身長の伸び等成長に応じて対応するため定期的・継続的な介入の必要性を感じた。また今回の取り組みで教員との顔の見える関係性が作れ、学校での自発的な取り組みもみられた。内容として運動パンフレットを使用したクラス全体での運動実施や自立活動への応用、個別での運動内容をまとめた冊子を各家庭へ配布し継続的な運動の支援等が挙げられる。理学療法士の学校健診への介入により運動器の問題に対して早期から治療・予防ができる雰囲気作りの一助となったと考える。今後は地域の学校へ予防活動の紹介を行い地域全体 (普通学校や他特別支援学校)の活動となれるよう関係性作りを進める必要があると考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p> 個人情報・プライバシーの保護に配慮し、発表に際して特別支援学校校長また施設長の承諾を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 103-103, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840476032
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_103
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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