シャフリングベイビーの粗大運動の獲得と行動特徴~自閉スペクトラム症とダウン症候群に着目して~

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 運動発達遅滞児の理学療法において、粗大運動の獲得過程にシャフリングを行う児(以下、シャフリングベイビー)が存在する。シャフリングベイビーには、歩行獲得後に自閉スペクトラム症 (以下、ASD)の診断や感覚の問題を伴う場合があるとされる (Okaiら2021、伊東ら2020)。一方で、ダウン症候群(以下、 DS)のシャフリングベイビーにおいてもASD傾向を認められることが多いと報告されている(齋藤ら2016)。しかし、シャフリングベイビーとASDの関係について、基礎疾患の有無が粗大運動の獲得時期や行動特徴に影響を及ぼすかを比較した報告はない。本研究では、中枢性疾患や染色体異常など基礎疾患のない運動発達遅滞(以下、MD)児とDS児にそれぞれ着目し、ASDの有無による粗大運動の獲得時期と行動特徴の違いについて明らかとすることを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> 対象は、2016年8月までにA療育センターの小児科を受診し、 2004年4月2日から2014年4月1日に出生した10学年のシャフリングベイビーのうち、①MD児15名と②DS児25名とした。方法は、診療録より(1)粗大運動(定頸・寝返り・座らせ座位・ひとり座位・ずり這い・手膝這い・シャフリング・つかまり立 ち・伝い歩き・ひとり立ち・歩行)の獲得時期、(2)行動特徴、 (3)ASDの臨床診断の有無について後方視的に調査した。分析は、各群をASDの有無により分け、粗大運動の獲得時期を対応のな いt検定で比較した。SPSSversion20.0を用い、有意水準は5%未満とした。粗大運動の獲得時期は、在胎週数が37週未満は修正月齢を用いた。 </p> <p>【結果】</p> <p> ①MD児15名のうち、ASD児が8名(53.3%)、非ASD児が7名 (46.7%)であった。対応のないt検定より、座らせ座位・つかまり立ち・伝い歩き・ひとり立ち・歩行において、非ASD児の獲得時期が有意に早かった。行動特徴は、MD群のASD児4名は 手足や身体の感覚過敏がみられ、2名は腹臥位を嫌がっていた。また、非ASD児の1名は足底過敏があり、靴を嫌がっていた。 一方で、②DS児25名のうち、ASD児が9名(36%)、非ASD児が 16名(64%)であった。対応のないt検定より、寝返り以外の粗大運動は有意差がみられなかった。行動特徴は、DS群のASD児 2名は手足の過敏がみられ、非ASD児の1名は足底接地を嫌がっていた。 </p> <p>【考察】</p> <p> 本研究のシャフリングベイビーにおいて両群ともASDを診断された割合は、ASDの有病率2.6%(Kimら2011)より高いことから先行研究と同様にシャフリングとASDの関連が示唆された。行動特徴は、両群とも手足など感覚過敏を伴う児が存在し、シャフリングの一要因であったことを考える。また、各粗大運動の獲得時期は、MD群は非ASD児の方が早く獲得しており、DS群は寝返り以外の獲得時期に差はみられなかった。これは、基礎疾患のないMD群は、粗大運動の獲得にこだわりなどASDの特性が影響を与えた可能性があるが、DS群は身体面に低緊張を伴いやすく精神面は頑固さを伴う児がいることから、ASD以外 に疾患由来の特徴が影響していたことを推測する。これらより、シャフリングはASDの早期兆候の一つとして考えられるが、染 色体異常など基礎疾患を伴う場合は疾患に由来した影響も関係していたことを推察する。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は、横浜市リハビリテーション事業団研究倫理委員会に承認されている。個人情報とプライバシーの保障については、対象児 とその家族の情報が個人を特定されて明らかになることがないように調査を行った。また、得られた データはID番号で管理し、個人が特定できないように配慮した。 (承認番号:yrs0107)</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 107-107, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840477824
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_107
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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