COPMとSMARTモデルにて目標共有し,入浴動作が自立した学童期脳性麻痺児の一例

DOI

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> リハビリテーション (以下:リハ)において,目標設定を患者と共に実施することは重要である.日常生活動作 (以下:ADL)の自立は本人の自己肯定感を向上させ,介助者の介助量軽減につながる重要な課題である.その中でも入浴動作は心理的要素として他者に見られたくない・介助されたくない課題であり,成長に伴い介助者の介助量が増加する課題の一つである. 今回,入浴動作自立に向けて,カナダ作業遂行測定 (以下: COPM)とSMARTモデルを用いて本人・家族と目標を設定し共有したことで,能動的に課題に取り組み自立に至った症例を報告する. </p> <p>【症例報告】</p> <p> 症例:13歳7か月男児.脳室周囲軟化症による脳性麻痺 (痙直型両麻痺).在胎27週840gにて出生.GMFCSⅢ,MACSⅢ, CFCSⅡ,EDACSⅠ,VFCSⅡ. 介入前評価は,GMFM̶88:64.8% (A:100%,B:96.7%, C:76.2%,D:51.3%),FIM:清拭動作1,移乗動作 (風呂・シャワー)3.入浴の全工程に介助を要していた.COPMで「風呂に一人で入れるようになりたい」重要度8,遂行度2,満足度 1.理由は「恥ずかしい.でも怖い」と表現した. </p> <p>【結果および経過】</p> <p> COPM実施後,SMARTモデルを用いて,本人と共に「14歳までにひとりで洗体・浴槽跨ぎ・浴槽につかる・浴槽から出ることができるようになる.」と設定し,家族と共有した.練習方法は,外来リハの際に課題確認・整理を行い,次回まで複数回自宅で実施することとした. 当初は,実施前に「できない」という発言が散見された.そのため,入浴課題を洗体,浴槽跨ぎ,浴槽内保持と課題を細分化し本人と課題を整理した.すると,浴槽内での姿勢保持に恐怖感が強く,ひとりで実施することに苦慮しており,その点に恐怖心が強いことが分かった.そのため外来リハ時に,浴槽内座位を想定し実施可能な座位を整理し床上で実施,それをもとに家族とともに自宅浴槽で試行を進めた.結果,浴槽に対して横向きでの正座・縦向きで片手支持での長座位・縦向きでの正座の3パターンであれば可能と本人が認識できた.認識後は,浴槽姿勢保持に特化し,家族が浴室内で一緒に見守る/脱衣所で待つ (短時間から長時間へ)など,監視のレベルを段階的に変更した. 初回評価から5か月後 (14歳時点)で浴槽内姿勢保持は自立し, FIM:清拭動作7,移乗動作7となり入浴動作全工程で自立となった.COPMは遂行度9.5,満足度10となった.目標達成時の GMFM̶88:68.14% (A:100%,B:100%,C:92%,D: 48.7%)となり,座位・床上の姿勢保持能力が改善した. </p> <p>【考察】</p> <p> 明確な目標はモチベーションを向上させ結果の改善につながる (Sigrid,2008).また,目標とした行動に焦点を絞り,できたことや上達していることを子どもや親にフィードバックすることは重要である (倉,2021)今回,COPM・SMARTモデルで目標を具体化し毎外来リハで本人の心理的な不安点や課題の遂行状態を整理しフィードバックを行ったことで,課題を明確化でき,モチベーションを維持しながら課題に取り組めたと考える.目標設定し,継続的なモニタリングを行うことは本人が率先して課題に取り組む環境を提供できることを示唆できた. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>発表に際して,ヘルシンキ宣言と当院規定に基づき,書面にて本児・保護者に「報告の趣旨」と「目的」, 「プライバシー保護」について説明し両者から同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 132-132, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840490624
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_132
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ