体重増加により歩行能力が低下した成人脳性麻痺に対する訪問リハビリでの関わり

DOI
  • 仲村 我花奈
    医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 リハビリテーション科
  • 小口 和代
    医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 リハビリテーション科
  • 後藤 進一郎
    医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 リハビリテーション科
  • 姫岩 奈美
    医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 脳性麻痺者において30歳前後で能力の低下が始まること (諸根ら,2001)や,体重の増加により,運動機能は後退することがある (江口,1991).今回,体重増加により歩行能力が低下し た症例に対し減量,歩行能力の改善目的で訪問リハを実施した.減量,歩行能力の改善には難渋したが,ADLは維持可能だった ため報告する. </p> <p>【症例報告】</p> <p> 20歳代の女性でGMFCSⅢレベルだった.グループホームに入所中だが,1週間に5日就労支援施設に通っていた.支援学校卒業時は装具や補助具を使用せず歩行可能だったが,体重が1年で15㎏増加し,週に3回程の頻度で転倒するようになった.その頃,居室の窓を閉めようとして転倒し左中手骨を骨折した.骨折後は活動範囲の縮小で更に体重が4㎏増加した.訪問リハは通院リハが終了した骨折の受傷後4ヵ月目に開始した.開始時の評価は,体重65㎏,BMI:25.5,脂肪率42.3%,筋肉量右下肢5.63㎏,左下肢5.44㎏, (脂肪率,筋肉量はIn body社製 In bodyS10を用いて計測),歩行速度0.6m/sec,GMFM項目D立位:25点,項目E歩行:28点,屋内は伝い歩き,屋外歩行は歩行車を使用し見守りだった.歩行が不安定なため,公共交通機関を利用して通う就労支援施設から送迎付きの就労支援施設に変更した. </p> <p>【経過】</p> <p> 介入当初の目標は環境調整による転倒予防だったが,急激な体重増加で環境調整では転倒のリスクが軽減できなかった.開始から3か月後に,目標を減量・下肢筋力の増強・安定した歩行に変更した.療法士は訪問リハで週2回,屋外歩行を20分から 30分実施した.自主トレは,好きな歌手の動画を観ながら,座位 (立位)での足踏み,腕上げ,起立,立位保持を指導し,実施内容,回数を自主トレ用紙に記録させた.食事はグループホームや就労支援施設で提供される食事のみで,目立つ間食はない状況はなかった. 訪問リハ開始から1年後,体重64㎏,BMI:25.7,体脂肪率42.9 %,筋肉量右下肢6.25㎏,左下肢5.83㎏,歩行速0.6m/sec, GMFM項目D立位:27点,項目E歩行:31点,歩行手段に変化はなかった.動画に合わせた自主トレの回数は1日平均2.7回であった.起立やスクワット等の運動は自主的に増えた.転倒頻度は3か月に1回程度であった. </p> <p>【考察】</p> <p> 体重や歩行スピード,歩行手段に大きな変化はみられなかった.これは転倒の恐れがあり一人で外出が困難なこと,通勤時の歩 行機会が減ったことから減量に必要な運動量が十分に確保できなかったためと考えた.またグループホームや就労支援施設の食事は,平等の観点から,症例のみ変更することが困難で,食事での体重コントロールも有効ではなかった.しかし1年間の 関わりで,下肢の筋肉量は徐々に増え,GMFMの項目D,項目 Eの点は向上し,骨折前より転倒回数は軽減された.体重の増加抑制,ADLの低下抑制,運動機能の維持は訪問リハでの運動指導や自主トレの定着が要因の1つと捉えた. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究参加には,参加は自由意志で拒否による不利益はないこと,および個人情報の保護について,文書と口頭で説明を行い書面にて同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 136-136, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840491904
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_136
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ