定型発達児における追視や注視を行うゲーム施行中の眼球運動

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抄録

<p>【背景】</p> <p>発達障害児等が眼球運動障害を有することから、追視 や注視などの眼球運動の向上を目的としたゲーム技術を用いたアプリが使用されている。眼球運動は読字能力の向上のみならず身体運動に影響するため、眼球運動を向上させることでさまざまな動作能力向上が期待できる。その一方で、定型発達児の眼球運動の発達については明らかにされていない。定型発達児における眼球運動の発達や年齢ごとの特徴を明らかにできると、発達障害児等への介入における目標設定やプログラム内容に活かすことができる。 そこで本研究では、ゲーム施行中の定型発達児の眼球運動を観察することで、定型発達児の眼球運動の特徴を明らかにすることを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p>5歳以上の定型発達幼児・児童を対象とした。協力の得られた幼稚園、幼児・児童が集まるイベントにおいて参加者を募集した。弱視を有する児、眼球運動に影響を及ぼす可能性のある眼科疾患を有する児は対象から除外した。幼児 (6歳以下 )、低学年 (7,8歳)、中学年以上 (9歳以上)の3群に分けて分析を行った。 対座法での眼球運動検査にて、追視の左右差およびサッケードの有無を評価した。Tobii Eye Tracker 5 (Tobii社)を用い、的を注視するアプリ「視線でバキュン!」 (株式会社デジリハ)を1回施行する中での失敗回数と視線軌跡長を測定した。3群間で、追視の左右差等の有無、失敗回数、視線軌跡長を比較した。統計学的解析には、SPSS ver.29を用いてカイ二乗検定、 Kruskal-Wallis検定、一元配置分散分析を行い、有意水準は5%とした。 </p> <p>【結果】</p> <p>対象児は89名の幼児・児童 (男児45名 女児44名,年齢5~14歳 平均±標準偏差7.6±2.2歳)であった。幼児41名、低学年21名、中学年以上27名であった。 追視に左右差等があった児は、幼児14名 (34.1%)、低学年1名 (4.8%)、中学年以上3名 (11.1%)であり、有意な関係があった (p=0.009)。明らかなサッケードが見られた児はいなかった。 失敗回数の中央値は、幼児16回、低学年12回、中学年以上11回であり、3群間に有意差はなかった。視線軌跡長の平均値は、幼児40.6±14.1mm、低学年37.5±11.5mm、中学年45.7± 19.5mmであり、3群間に有意差はなかった。 </p> <p>【考察】</p> <p>追視に左右差等がある児は、幼児に多いことが分かった。視力は3歳ころまでに発達すると言われているが、本研究の結果から、運動に関わると考えられる円滑な眼球運動は幼児期においても発達を続ける可能性が示唆された。 的を注視するゲームにおける失敗回数は年齢が上がるにつれて減少する傾向にあったが有意差はなかった。また、視線軌跡長は年齢間で有意差がないことが分かった。視線軌跡長は個人間のばらつきが大きかったため、今後も対象者数を増やして検討したい。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は福島県立医科大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。対象者には口頭と文書にて説明し、同意を得て実施した。本研究への協力を断っても、何ら支障のないことを書面にて伝えた。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 146-146, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840497536
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_146
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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