肢体不自由者における物品の掴み方を通した上肢の動作遂行能力と上肢骨格筋構造の関係

DOI
  • 石倉 英樹
    広島都市学園大学 健康科学部 リハビリテーション学科
  • 奥田 智沙
    広島都市学園大学 健康科学部 リハビリテーション学科
  • 白石 航史郎
    広島都市学園大学 健康科学部 リハビリテーション学科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 療育やリハビリテーションの臨床では、重度の肢体不自由者に 対して、玩具などの様々な物品を通して介入が行われている。物品を通した介入では、対象者が上肢のリーチや把握動作などを獲得していく必要があり、上肢の巧緻性や動作の遂行能力が様々な形で評価・検討されている。身体の動作遂行能力は、骨格筋の構造が関係していることが報告されているが、近年では超音波画像を用いた骨格筋の評価により、日常生活機能や筋力などとの関連性が報告されており、リハビリテーションの臨床でも有効な評価方法として挙げられる。小児の分野でも健常者を対象として、四肢の骨格筋を超音波画像で評価している報告があるが、肢体不自由者などについて検討した報告は少ない。超音波画像による評価では、骨格筋の量的な側面だけでなく、筋束や筋膜の配列、筋内の結合組織など、質的な評価にも用いることができる。そこで本研究では、超音波画像による評価を用い、重度の肢体不自由者に対し、上肢の動作遂行能力と上肢骨格筋構造の関係性について検討し、知見を得たので報告する。 </p> <p>【方法】</p> <p> 対象は、6-15歳までの肢体不自由者6名とした。上肢の動作遂行能力の評価として、物品の掴み方と把握様式について評価を行った。また、把握の可否で群分けを行い、物品の把握ができなかった群を把握不可群 (3名)、何らかの形で物品の把握ができた群を把握可能群 (3名)とした。骨格筋形態は,超音波画像診断装置 (FAMUBO-W,誠鋼社)を用い,上腕と前腕の筋群を撮影して評価を行った。評価は、撮影した写真による筋の形態観察と、画像解析ソフト (image J, NIH)を用いた筋厚・筋輝度測定を行った。 </p> <p>【結果】</p> <p> 上肢の動作遂行能力では、把握様式:把握できない3名・手掌把握可能2名・指先つまみ可能1名であった。骨格筋の筋厚は、前腕屈筋:把握不可群11.0±5.0mm・把握可能群21.0± 2.5mm、上腕二頭筋:把握不可群15.7±6.0mm・把握可能群 16.5±6.5mmであった。筋輝度は、前腕屈筋:把握不可群 100.9±34.4・把握可能群61.3±31.4、上腕二頭筋:把握不可群98.8±27.2・把握可能群62.5±19.3であった。骨格筋の形態観察では、把握不可群で筋表層と皮下組織の境界面が不明瞭となり、筋膜が不明瞭な部位のある画像が描出された。 </p> <p>【考察】</p> <p> 筋厚について調査を行った先行研究では、健常者において筋厚 の発育に部位差があることや動作に影響することが報告されている。本研究の筋厚結果では、上腕の筋で大きな差がなかったが、前腕屈筋で把握可能群の方が大きい傾向にあった。これは、把握可能群で上肢の動作遂行能力が高いことにより、手指の動きを日常的に使用することが増え、前腕の筋群の発達に影響したと考えられる。筋輝度について調査を行った先行研究では、筋輝度の上昇が筋力低下や病変の早期から生じることや、筋内脂肪・結合組織の増加などを反映していることが報告されている。本研究の筋輝度結果では、把握不可群で上腕・前腕の輝度が高値となっていた。このことから、動作遂行能力と筋の質的変化の関連性が示唆された。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は、発表者が所属する施設の研究倫理委 員会 (承認番号:2023003)の承認を得て実施した。本研究は、ヘルシンキ宣言に従い倫理と個人情報に配慮し、所属する施設と、対象者の保護者およびキーパーソンを代諾者として研究内容を書面および口頭で説明し、同意を得た上で研究を実施した。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 149-149, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840499200
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_149
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ