独歩可能児のSDR術後経過 -粗大運動能力改善に関わる術前要因の検討-

DOI
  • 小野 泰輔
    沖縄南部療育医療センター リハビリテーション課
  • 上原 久人
    沖縄南部療育医療センター リハビリテーション課
  • 山田 知
    沖縄南部療育医療センター リハビリテーション課

抄録

<p>はじめに </p><p> 当センターは脳性麻痺児に対する選択的脊髄後根切断術 (Selective Dorsal Rhizotomy,以下SDR)後の集中リハビリテーションを行っている。SDRは脳性麻痺リハビリテーションガイドライン第2版より、対象の選択と目的を慎重に考慮すれば勧められる治療であるとされている。これまでSDR対象の選択基準については、独歩可能児に関する報告は少ないため、我々は独歩可能児のSDR前後の経過を追跡し、SDR前と術後1年の Gross Motor Function Measure (以下GMFM)パーセンタイル値の変化を参考に粗大運動能力の改善に関わる術前因子を検討した。その結果を報告する。</p><p> 方法 </p><p> 対象:県内の3施設でSDR術後集中リハを受けた独歩可能レベルの22例を対象とした。 (GMFCSⅠ18名、Ⅱ8名、2002年9月 ~2021年10月までのデータを使用。その中で、術前のGMFMスコアが85%を超えた3名に関してパーセンタイル値の変化を見ることが難しい為除外した。また疼痛緩和などの目的以外では適応が限定的とされるため10歳以上も1名除外した) 評価項目:手術年齢および術前GMFCSレベルと術前後の GMFM-66値変化の関連。 分析:手術前と術後1年のGMFM-66スコア+20パーセンタイル以上を改善、-20パーセンタイル以下を悪化、その間を変化なしとして分析。対象者をGMFCSⅠ、Ⅱ群に分け、各群において術後改善あり/なし・悪化で平均手術年齢に差があるか分析した。また、両群間でGMFM-66術前・術後1年の値に改善が見られた割合を比較した。統計学的検定にはt検定を用いた。</p><p> 結果 </p><p> GMFCSⅠの平均手術年齢は5.3±1.6歳、GMFCSⅡの平均手術年齢は6.3±2.5歳、全体の平均手術時年齢は5.5±2.0歳であった。GMFCSⅠで+20パーセンタイルを超え、改善が見られた児は8名で平均手術年齢5.3±0.4歳、変化が見られなかった児は7名で平均手術年齢4.0±0.8歳と2群間で有意差がみられ、 GMFCSⅠにおいて術後1年で改善した群では手術年齢が高い傾 向がみられた。 (P<0.01)GMFCSⅡで改善が見られた児は1名、変化が見られなかった児は6名と、術後1年のGMFM点数は伸び ているが、パーセンタイル値では変化が見られず、手術年齢による有意差も見られなかった。どのレベルにおいても悪化した児はみられなかった。 </p><p> 考察 </p><p> SDR前後でパーセンタイル値が改善したGMFCSⅠ児の平均年齢が約5歳、変化が見られなかった児の平均年齢が約4歳と、手術年齢に有意差が認められる結果となった。 GMFCSⅠ児のリハ場面では自発的に運動が出来るが故の難しさに直面する事も少なくない。特にSDR後の集中リハの重要性はコンセンサスであるが、目標設定や課題の共有において、幼少時よりもある程度の年齢に達した方がリハを行い易い印象を持っていた。エリクソンの発達段階では、5歳前後は言語能力や認識力が高まる時期で、様々な課題に取り組む、物事を達成す ることにより次の課題への「勤勉性」も見られるとされており、改善が図れた1つの要因になったとも考えられる。 今回の結果から独歩可能児でSDR術後1年の改善に関わる術前因子に年齢が示唆されたが、GMFCSⅠとⅡの改善度に違いが出た要因について十分な調査・検討が行えていない。今後さらに詳細なデータを蓄積していく必要がある。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>この研究は沖縄南部療育医療センター院内倫理委員会の了承を得ている</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 152-152, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840500864
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_152
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ