当院PICUにおける早期離床・リハビリテーション加算前後の身体機能評価の比較

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抄録

<p>【はじめに,目的】</p> <p> 2022年に小児集中治療室 (以下PICU)で早期離床・リハビリテーション加算(以下加算)が開始された. 成人と異なり,小児は先天性疾患等が含まれ個別性の高い疾患が多く,発育や発達段階が様々で,ゴール設定が難しいため十分なエビデンスは確立していない.当院では加算の算定が可能になる前より,医師,看護師 (以下Ns),理学療法士 (以下PT)で共同して早期離床プロトコルを作成し, 2021年9月から重症例はリハビリテーション処方により PT,その他はNsが離床を進めた. 2022年5月以降は,基本的には 全例にPTが介入した.本報告では,PICU入室患者の加算前後の身体機能を比較し,小児集中治療領域での早期離床の効果と今後の課題について検討する. </p> <p>【方法】</p> <p> 当院PICUに入室した患者のうち,入室後48時間以上PICUで治療した患者を対象として,2021年度の2カ月間 (加算開始前:以下 「加算前群」46例)および2022年度の2カ月間 (加算開始後:以下 「加算後群」61例)について調査した.疾患内訳,入室期間,安静度の経過 (①安静,②体位変換,③ベッド内活動:ベッド内で30°以上のヘッドアップや抱っこができるようになった状態,④立位 ,⑤歩行),入退室時の身体機能評価 (Functional Status Score: FSS),入室前および入退室時の9-grade mobility assessment scale (以下9-grade),PT介入の有無について診療録から後方視的に調査した.統計手法にはMann-Whitney U検定を用い,優位水準は5%未満とした. </p> <p>【結果】</p> <p> 疾患内訳:「加算前群」術後36例,中枢運動障害4例,呼吸器感染2例,その他4例,「加算後群」術後42例,中枢運動障害9例,呼吸器感染5例,その他5例であった.年齢「加算前群」中央値8カ月 (2カ月-16歳),「介入後群」1歳0カ月 (4カ月-14歳)で有意差は認めなかった.PT介入は「介入前群」33%,「介入後群」95%で有意に増加した.入室期間は「介入前群」159 (66-474)時間,「介入後群」153 (48-744)時間で有意差を認めなかった.PICU入室中に「ベッド内活動」以上へ到達したのは「加算前群」46%, 「加算後群」64%であった.入室時のFSS合計点は「加算前群」 29 (6-30)点,「加算後群」29 (8-30)点と有意差を認めなかった が,退室時には「加算前群」14 (6-28)点,「加算後群」9 (6-30)点であり,「加算後群」が有意に低値であった.9-gradeは有意差を認めなかった.全例において治療や観察の強化が必要な重大インシデントなどは認めなかった. </p> <p>【考察】</p> <p> 年齢,入室時FSSの値は有意差がなく,入室時の全身状態は2群 間に差を認めなかった.「介入後群」ではPT介入割合が増加したことで,早期から運動機能評価を行い,リスクを踏まえて抗重力位を設定しNsに伝達することで,「ベッド内活動」へ到達した患者の割合が増加したと考えた.退室時のFSS合計点は「加算後群」が優位に低かったが,「9-grade」は有意差を認めなかったことから,PICU入室中のPTの介入は自動運動よりもベッド上での早期のヘッドアップなどにより覚醒度やコミュニケーション,哺乳や摂食への介入による栄養摂取に効果があったと考えた.本研究の限界は遠隔期での運動機能評価を行っておらず,PICU退室後や退院後の経過が不明であるため今後の課題としたい. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は後方視的調査のため,倫理的な配慮として個人を特定できないよう個人情報の扱いに配慮した.またオプトアウト手続きを行い,当院の倫理委員会の承認を得た (受付番号:14).</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 163-163, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840507776
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_163
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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