歩行可能な脳性麻痺患者の立位姿勢の特徴

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  • -Posture and Postural Ability Scaleを用いた検討-

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 脳性麻痺 (以下、CP)患者は関節拘縮や骨変形による姿勢障がいが生じやすく、また下肢屈曲位の立位姿勢が観察されやすいと報告されている。しかし、臨床で簡易的に姿勢を評価できる尺度が無く、歩行可能なCP患者の立位姿勢に着目した報告は少ないのが現状である。姿勢の評価尺度にはPosture and Postural Ability Scale (PPAS)があり、本学会にて日本語版 PPASの信頼性や妥当性を報告予定である。PPASは背臥位、腹臥位、座位、立位の各姿勢にて、姿勢能力 (どのような運動が可能か)と姿勢の質 (前額面/矢状面におけるアライメントな ど)を観察する。今回、姿勢の評価尺度であるPPASを用いて、歩行可能なCP患者の立位姿勢の特徴を明らかにすることを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> 本研究は記述的研究とし、対象は小児関連施設に通院している CP患者とした。選択基準は粗大運動能力分類システム (GMFCS)レベルⅠ、Ⅱの者とし、GMFCSレベルⅢ-Ⅴの者は除外した。本研究の対象者は26名 (23.5±16.8歳、GMFCSレベル Ⅰ:10名、Ⅱ:16名、痙直型両側性麻痺:25名、痙直型片側性麻痺:1名)とした。PPASでは姿勢能力をレベル1~7 (レベル 1が最低、レベル7が最高)、姿勢の質は前額面および矢状面から頭部や体幹、骨盤、下肢、体重分布など6項目を「対 称・中 間位 (1点)」または「非対称・正中からの逸脱 (0点)」で評価し、合計はそれぞれ最高6点となる。今回PPASは立位の項目のみと し、測定は手順を十分に理解した理学療法士が実施した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 結果を中央値[四分位範囲] (最小値-最大値)で示す。姿勢能力は7.0[7.0-7.0] (2-7)、姿勢の質 (前額面)は5.5[2.8-6.0] (1-6)、姿勢の質 (矢状面)は2.0[1.0-5.0] (0-6)であった。姿勢の質 (矢状面)における「対称・中間位 (1点)」が観察された割 合は、GMFCSレベルⅠ、Ⅱの順に、「頭部は正中位」: 90%、 56%「体幹は中間位」:60%、44%「骨盤は中間位」:60%、 31%「下肢は伸展位」:50%、6%「足部は中間位で全面接地 」:50%、19%「体重分布は均等」:30%、25%であった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 今回、矢状面のスコアが前額面と比較して相対的に低値であり、姿勢の質 (矢状面)ではGMFCSレベルⅠよりもレベルⅡで採点が低い傾向が見られた。またレベルⅠは体重分布、レベルⅡは下 肢の項目が最も低い結果であった。歩行可能なCP患者では、腰椎過前弯や骨盤前傾による腰痛、立位・歩行時の膝関節屈曲位による膝関節痛などが報告されているため、臨床で立位姿勢を評価することは重要と考えられる。今回は記述的研究のため、今後は疼痛等の二次症状との関連や年齢を考慮した検討をしていく必要がある。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は東京都立大学荒川キャンパス研究倫理委員会 (承認番号:22037)の承認後、対象者と代諾者には口頭と書面を用いて研究の概要を十分に説明し、同意を得た上で実施した。本研究への協力を断っても、今後の診療や通院には何ら支障のないこと、一度同意した後でも同意を撤回できる旨を口頭と書面にて伝えた。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 166-166, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840510080
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_166
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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