デュシェンヌ型筋ジストロフィーマウスモデルに対するジストロフィンタンパク補充は運動機能改善に作用する

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p>デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、小児期に発症し、筋力低下や易疲労症状が進行する難治性筋疾 患である。DMD遺伝子の変異と、それに伴うジストロフィンタンパクの欠損が病因であることはよく知られているが、筋線維変性と筋機能低下に至る分子機序についてはまだ十分に解明されていない。そこで、本研究では、DMDマウスモデルに対してジストロフィン発現が正常な細胞を移植し、筋組織にジストロフィンを補充する実験手法を用いて、ジストロフィン補充がDMD筋の運動機能に及ぼす効果を評価することと、ジストロフィン欠損に起因するDMD病態の分子機序を明らかにすることの2点を目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p>ジストロフィン補充がDMDマウスの運動機能 (筋力と疲労耐性)に及ぼす効果を正確に評価するため、運動機能評価法の新規確立を目指した。筋力は、麻酔下のマウスの下腿後面に経皮的電気刺激を加えて足関節底屈を惹起し、その際に検出される最大等尺性収縮時トルク値 (MCT)で評価した。筋疲労耐性は、9m/分で15分間の平坦トレッドミル走行を負荷し、その前後でのMCTの下がり幅で評価した。上記2種類の運動機能評価は、4週に1回 (13週齢(wo)、17wo、21wo)の頻度で、5 woの時点で腓腹筋に健常筋芽細胞を局所投与したDMDマウス (DMD移植群)、未処置のDMDマウス (DMDcon群)、野生型マウス (WT群)の3群に対して実施された。さらに21woでの機能評価後、筋サンプルを採取し組織学解析を実施した。 </p> <p>【結果】</p> <p>全ての評価時点において、DMD群ではWT群と比較してMCTが優位に低下していた。一方、DMD移植群とDMDcon群との比較では、統計学的に有意な差は認められなかった。組織学解析では、DMD移植群の腓腹筋で全筋線維のうち平均し て約10%の筋線維でジストロフィンが補充されていた。さらに、相関分析により、ジストロフィン補充率がMCT値と正の相関関 係にあることが示され、ROC分析では、ジストロフィン補充率 10%が、重度の筋力低下を防ぐのに十分な閾値であることが示された。疲労耐性評価では、DMD移植群でDMDcon群と比較して、 21wo時点において有意な改善が見られた。また、相関分 析の結果、疲労耐性とジストロフィン補充率との間には有意な相関は認められず、補充率が低くとも疲労耐性は有意に改善されることが示された。組織学解析では、DMD移植群において遅筋線維の占める割合が他の2群と比較して有意に増加していた。さらに、DMD移植群について同一筋サンプル内での単一筋線維ごとのミトコンドリア活性を比較したところ、ジストロフィン陽性線維では陰性線維よりも有意にミトコンドリア活性が向上していた。 </p> <p>【考察】</p> <p>DMDマウスでは、10%のジストロフィン補充率で、重度の筋力低下を防ぐ効果が発揮されることが示された。さらに、DMD筋にジストロフィンが補充されると、酸化型筋線維が優先的に再生され、ミトコンドリア活性が有意に向上することにより、補充率の如何を問わず疲労耐性が有意に改善されることも証明された。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究はCiRA動物実験委員会の承認(計23-196)を受け実施した。 </p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 29-29, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840515840
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_29
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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