脳性麻痺児・者の歩行効率に関する要因-歩容異常の影響-

DOI
  • 石本 壮星
    富山県リハビリテーション病院・こども支援センター リハビリテーション療法部 こども理学療法科 国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科
  • 糸数 昌史
    国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 学齢期以降に歩行・粗大運動能力を維持していても成人期になり歩行・粗大運動能力が低下した脳性麻痺 (CP)の症例を目にする.WalleらによるとCP児は健常児と比較し歩行中のエネルギーコストが高く,歩容異常が歩行効率低下に関連すると報告している.木元らはCP児を対象に,Total Heart Beat Index (THBI)にて心拍数から歩行効率を算出し,歩容分類が片側肢でも正常範囲内に入っていると歩行効率が良いと報告している.しかし,歩容異常の部位と歩行効率との関係は明らかになっていない.本研究はCP児の歩行効率を説明する要因を明らかにするため,歩容・バランス・歩行持久力などのパラメータとの関連について検討した. </p> <p>【方法】</p> <p> 対象はGMFCS LEVELⅠ・ⅡのCP児・者33名 (平均年齢14.8± 6.7歳)とした.対象者は腕装着型光学式センサーを着用し,片道30mの歩行路を6分間歩行 (6MD)実施し,その動作映像を前額面と矢状面から記録した.歩行効率の指標としてTHBI (歩行中の総心拍数/総歩行距離)を算出し,歩容はEdinburgh visual gait scoreを使用した.副次的パラメータとして,最大ステッ プ長テスト (MSL)とBerg Balance Scaleを実施した.THBIは,先行研究を参考に健常児のTHBI下限値 (2.13beat/m)以下をカ ットオフと設定して歩行効率の高低で2群に分類した.統計手法は,歩行効率の高低による差は対応のないt検定または Mann-WhitneyのU検定 (EVGS・BBS・MSL・6MD)を用いた. THBIと各歩行パラメータおよびTHBIとEVGSの各項目との関連 は,ステップワイズ法による重回帰分析で解析した.統計ソフ トはSPSS Statics Version28.0を用い,有意水準は5%とした. </p> <p>【結果】</p> <p> 歩行効率の高い群は,低い群と比較してTHBI,EVGS,BBS, MSL,6MDは有意に高い値であった.THBIに関連する因子として,EVGSとBBSの項目が選択された.さらに,THBIを従属変数,EVGSの各項目を独立変数とした重回帰分析の結果,3分で立脚相の踵挙上,遊脚終期の膝関節角度,遊脚相における足部クリアランス,6分で立脚相の踵挙上,遊脚終期の膝関節角度,遊脚相における最大膝屈曲角度が選択された. </p> <p>【考察】</p> <p> 本研究の結果から,CP児・者の歩行効率に影響する要因として歩容異常およびバランス能力が選択された.NandyらはCP児・者の異常な歩行パターンは不安定な姿勢制御を伴い,歩行効率とバランス能力との関連性を示唆している.THBIと関連があ る歩容の項目として,立脚相の踵挙上と遊脚終期の膝関節角度が選択された.立脚相における踵離地の遅延は対側歩幅の短縮に関連し,早期の踵挙上は重心の前方移動を制限することにつながることから,踵挙上のタイミングが歩行効率に影響する妥当な要因であると考える.また,遊脚終期の膝関節角度はステップ長の減少と初期接地の膝屈曲角度の増加に関連していること から,歩行効率との関連が大きい要因であることを示している.本研究の結果は,CP児の歩行効率の改善を目的とした介入の結果分析に有用であり,歩行効率改善を目的としたアプローチと して歩容とバランス能力に着目した治療戦略の必要性を改めて示すものである. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は国際医療福祉大学研究倫理審査委員会にて承認後 (承認番号:22-Ig-243)対象と保護者には口頭と書面で説明し,承諾を得て実施した.</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 33-33, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840518272
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_33
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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