重症心身障がい児(者)向け呼吸機能評価スケール開発への取り組み

DOI
  • 大曲 正樹
    聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 聖隷おおぞら療育センター リハビリテーション部
  • 南野 初香
    聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 小児科
  • 原品 結衣
    聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 聖隷おおぞら療育センター リハビリテーション部
  • 松井 香菜子
    聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 聖隷おおぞら療育センター リハビリテーション部
  • 浅井 明美
    聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 聖隷おおぞら療育センター リハビリテーション部
  • 鈴木 里枝
    聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 聖隷おおぞら療育センター リハビリテーション部
  • 熊谷 有加
    聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 聖隷おおぞら療育センター リハビリテーション部
  • 内山 圭
    聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 聖隷おおぞら療育センター リハビリテーション部
  • 河合 美早
    聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 聖隷おおぞら療育センター リハビリテーション部
  • 天野 美乃里
    聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 聖隷おおぞら療育センター リハビリテーション部
  • 木部 哲也
    聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 聖隷おおぞら療育センター 小児科

抄録

<p>【はじめに,目的】</p> <p> 我が国の重症心身障がい児 (以下重症児)の数は増加傾向にあり,呼吸器感染症が主要な死亡原因として挙げられている.そのた め呼吸状態の適切な評価は,呼吸器感染症の予防に重要であり, 呼吸状態の変化を詳細に捉える評価スケールの開発が必要である.本研究の目的は,重症児の呼吸状態を詳細かつ簡便に評価が可 能な新しい評価スケールの開発と,その信頼性,妥当性の検討を目的とすることである. </p> <p>【方法】</p> <p> 重症心身障害児施設の入所者を対象とした.全118例の入所者から強度行動障害によりリハビリ介入がない16例の高齢者を除外し,102例 (平均36.6歳,超重症児 (者)・準超重症児 (者)判定基準 (以下超重症児判定基準)スコア平均16.9点)を対象とした.評価項目は診療記録を後方視的に調査し,呼吸器疾患の入 院リスク因子や,超重症児判定基準など先行研究より選択した.本研究では身体機能 (年齢,横地分類,入院歴,摂食状況,呼 吸器感染症治療歴,発熱歴),呼吸機能 (側弯,可能な姿勢, SpO2値,唾液の貯留,聴診・触診所見,咳嗽力,嚥下機能),呼吸ケアの必要度 (吸引回数,ドレナージ回数,人工呼吸器,パルスオキシメータ,酸素,吸入器,排痰機器,BVMの使用状況)の3領域を各8項目,合計24項目を調査した.各項目は0から 3までの4段階のリッカート尺度を用いて症状,重症度,能力等を階層化し,最良0点,最重症を72点にスコア化した.その総合点と超重症児判定基準との相関関係から開発したスケールの妥当性を検討した. 各評価項目,総合点の検者間信頼性の検討には重み付けカッパ係数と級内相関係数ICC (2,1)を使用した.妥当性の検討には Spearmanの順位相関係数を用いた.統計学的有意水準は5%とした. </p> <p>【結果】</p> <p> 各評価項目の重み付けカッパ係数は0.930~1.0,総合点の級内相関係数ICC (2,1)は0.995であり,検者間の信頼性が確認された.また超重症児判定基準との間に有意な相関関係 (rs=0.85)が認められ,開発したスケールの妥当性も確認された.超重症児判定基準により18段階に階層化された対象者を,開発し た評価スケールでは41段階に階層化が可能であった. 次に総合点と各評価項目との相関関係を検討した結果,咳嗽力,吸引回数,パルスオキシメータの使用状況,ラ音の状況,摂食 状況,触診所見,ドレナージ可能姿勢等は特に高い相関関係を認め,呼吸状態の重要な指標であることが示唆された.一方,発熱の回数のみ有意な相関関係を認めなかった.また年齢は負の相関関係を認めた. </p> <p>【考察】</p> <p> 開発した評価スケールの信頼性と妥当性が示唆された.また超重症児判定基準と比較し,より詳細に呼吸機能を評価することが可能であった.総合点と相関関係を認めない項目等については修正が必要と考えられた. 本研究の成果は,重症児の呼吸機能を簡便かつ詳細にスコア化することが可能になったことである.経時的なスコアの変化から呼吸機能を捉え,重症度に応じた適切なケアを提供することが可能となることで,呼吸器感染症予防に寄与する可能性がある.今後は評価項目の再検討や,対象者を増やして検討していく. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究はオプトアウト方式を用いた後方視的研究である.研究の実施に際して,聖隷三方原病院倫理委員会で承認を得た (承認番号:第 22-51号). </p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 35-35, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840519936
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_35
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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