重症心身障がい児・者における骨格筋量・筋質と肺炎発症との関連-縦断観察研究-

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 重症心身障がい児・者 (以下,重症児・者)は肺炎を含む呼吸器感染症を合併しやすいことが知られており,死亡原因の主な一つとされている。高齢者において骨格筋量の低下は肺炎の発症や再発に関連していることが報告されている。重症心身障がい児・者においても骨格筋量が低下しているため,肺炎を発症しやすいことが考えられるが,渉猟しえた限りではこれらの関連性を調べた研究は見当たらない。そこで本研究は重症児・者の骨格筋量および筋質が肺炎の発症に及ぼす影響を検討することを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> 対象者は当院へ入院している重症児・者74名(男/女:48/26名,平均年齢:43.4±17.8歳)とし,ベースライン評価時に肺炎を 発症している者は除外した。ベースラインの評価として診療録より気管切開の有無,人工呼吸器使用の有無,栄養摂取状態 (経口,経鼻経管,胃瘻または腸瘻,持続注入),側弯の有無,アルブミン値,リハビリテーションによる1ヶ月あたりの平均 離床時間,過去1年間の肺炎発症の有無,身体属性として年齢,性別,BMI,身長,体重の情報を得た。骨格筋量・筋質の測定は超音波画像診断装置を用いて行い、上腕二頭筋,大腿四頭筋,腹直筋,内・外腹斜筋,腹横筋の筋厚と筋輝度を評価した。ベースラインから半年間のフォローアップ期間に,肺炎を発症した者を肺炎群(n=23,男/女:17/6,平均年齢40.3±20.2歳),発症しなかった者を非肺炎群(n=51,男/女:31/20,平均年齢 44.8±16.5歳)とした。統計解析として,ベースラインにおけ る群間比較をχ2検定またはマン・ホイットニーのU検定にて行った。また肺炎の発症に関連する要因を抽出するため,従属変数として肺炎の発症を,独立変数として群間比較にて有意差を認めた項目を投入したロジスティック回帰分析を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。 </p> <p>【結果】</p> <p> 群間比較の結果,気管切開の有無(p=0.019),栄養摂取状態 (p<0.002),過去1年間の肺炎発症の有無 (p=0.001),内腹斜筋筋厚 (p=0.032)において有意差を認めた。一方で他の項目においては群間による差を認めなかった。ロジスティック回帰分析の結果,肺炎の発症には過去1年間の肺炎発症 (オッズ比: 4.54,p=0.026)と内腹斜筋筋厚 (オッズ比:0.008,p=0.025)が有意な関連を示した。 </p> <p>【考察】</p> <p> 重症児・者における肺炎の発症には内腹斜筋筋厚と過去1年間の肺炎の有無が関連していた。腹斜筋群は腹直筋よりも強く呼気に影響していること,特に内腹斜筋は呼吸需要が増加する状況で腹腔内圧を調節することが報告されている。そのため,内腹斜筋の筋量低下は咳嗽やくしゃみなどの気道クリアランスの低下につながり,肺炎のリスクを高めている可能性があると考えられる。以上より、重症児・者の肺炎発症は内腹斜筋の筋厚減少によって予測できることが示唆された。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は,和歌山病院倫理審査委員会の承認を 得て実施した (承認番号:04-1)。また,すべての被験者の家族または成年後見人に本研究の趣旨および内容について口頭および文書で説明し,自由意思による参加の同意を書面により得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 53-53, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840530688
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_53
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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