独歩を獲得した健常幼児の発達状況と靴の形状の関係

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 近年、幼児の足部の発達に関わる要素として、靴におけるつま先の余裕が重要と考えられているが、日常使用している靴のつま先の余裕 (以下:つま先の余裕)と乳幼児の運動発達との関係についての研究は限られている。 本研究は、独歩可能な乳幼児の発達状況とつま先の余裕の関連性を明らかにすることを目的とし、遠城寺式乳幼児分析的発達検査法 (以下:遠城寺式検査)の各領域とつま先の余裕との相関関係を検討した。 </p> <p>【方法】</p> <p> 1. 対象</p><p> 対象は、名古屋市某法人の複数の保育所で募集された独歩を獲得し日常的に歩行している1-2歳の幼児とした。除外基準は、発達障害、知的障害、神経系疾患、整形外科疾患を有する者とした。 </p><p>2. 測定項目</p><p> 乳幼児の発達状況を遠城寺式乳幼児分析的発達検査法を用いることで評価した。本研究では、日常的に参加者の保育を担当している保育士が評価を行なった。その後、実際の月齢と遠城寺式乳幼児分析的発達検査法における各領域での発達月齢の差 (以下:月齢差)を算出した。 つま先の余裕は、靴のサイズと足のサイズの差を算出することで評価した。足長の評価は股関節・膝関節が屈曲90度になる椅子座位姿勢で行、硬い床面の上に測定面を接地させ、踵点から足先点 (第一趾と第二趾で長い方の足趾点)を結んだ直線距離を計測した。その後、左右の足長の平均値を算出した。靴のサイズは、靴からインソールを取り出し、最後点と最前点を結んだ直線距離を計測した。 その後、遠城寺式検査の各領域の月齢差とつま先の余裕の Spearmanの相関係数を算出した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 14名が対象となり,平均月齢は27.4±4.5ヶ月であった.遠城寺式検査の月齢差は移動運動領域が-0.1±3.2ヶ月、手の運動が-0.5±6.0ヶ月、基本的習慣が-2.0±3.3ヶ月、対人関係が 1.2±6.0ヶ月、発語が-3.0±5.5ヶ月、言語理解が-1.4±5.9ヶ月であった。平均足長は13.5±0.8cm,平均インソール長は 14.2±1.1cmであった.つま先の余裕は0.6±1.cmであった.遠城寺式検査の各領域の月齢差とつま先の余裕のSpearmanの相関係数を算出した結果、移動運動の月齢差とつま先の余裕の間にのみ有意な正の相関を認めた (rs=0.6、p=0.03)。 </p> <p>【考察】</p> <p> 本研究では独歩を獲得した幼児を対象に、遠城寺式検査の各領 域の月齢差とつま先の余裕のSpearmanの相関関係を検討した。その結果、移動運動の月齢差とつま先の余裕の間に有意な正の 相関関係を認め、他の領域には相関関係がないことが明らかになった。報告により差はあるが、子供の靴においてつま先の余裕は5~15mm程度必要とされている。本研究におけるつま先の余裕は0.6±1.cmであり、小さい靴を履いている乳幼児が多いことがわかる。遠城寺式の移動運動領域には「走る」「両足で飛ぶ」といった足趾の活動が必要な項目が多く、小さい靴を履いたことが足趾の運動発達に負の影響を及ぼし移動運動領域のスコアが低くなったことが推察される。本研究は横断的研究であり、発達状況とつま先の余裕の因果関係は明らかになっていない。また、つま先の余裕が発達に及ぼす長期的な影響は明らかになっていないため、さらなる調査が必要である。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は東京工科大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。ヘルシンキ宣言に基づき研究の目的および方法を対象者の保護者に対し十分に事前説明し、研究協力の同意を得て行った。また、本研究への協力を断っても、何ら支障のないことを書面にて伝えた。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 57-57, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840533760
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_57
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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