明石市立特別支援学校における学校理学療法士の役割 ―教育現場での医療的な支援について―

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 筆者は現在、兵庫県明石市内の肢体不自由児を対象とした特別支援学校にて、内部専門家として勤務している。学校理学療法士 (以下、学校PT)は、学校に在籍する児童生徒 (以下、生徒)の実態把握や自立活動の指導等に関わるとともに、教職員に対して指導を行うのが主な役割であるが、近年は本校でも口腔・鼻腔内や気管カニューレ内部の喀痰吸引などの医療的ケアの導入が進み、酸素投与のみならず人工呼吸器を装着した生徒も在籍しており、教育現場における医療的な支援の必要性が高まっている。本発表では、そのような状況下における学校PTの役割について、実情を交えながら報告する。 </p> <p>【方法】</p> <p> 現在、本校には全生徒36名 (小学部20名、中学部12名、高等部 4名)が在籍し、そのうち、喀痰吸引が必要な生徒は14名、学 校において人工呼吸器を装着している生徒は5名在籍している。医療的ケアを必要とする生徒は年々増加し、研修を受けた担任が一部の医療的ケアを担っているが、喀痰吸引の回数が多いことにより授業時間を確保しづらい実情が存在する。教員は、生徒に対して痰の貯留音を聴取し始めたらすぐに吸引している様子がみられた。本校では、学校PTが授業中に各教室を巡回しているが、痰の貯留音が聴取できる生徒に対して体位ドレナージを行い、痰の喀出量を増加させることで吸引回数の減少を試みることがしばしばみられる。そこで、夏季休暇中の時間を活用して、教員や看護師を対象に全体での研修会を開催した。具体的な内容としては、①体表面から視認できる胸部の解剖学的位置の確認方法、②呼吸の動きをみるポイント、③呼吸筋、呼吸補助筋の活動およびその筋の筋緊張の見方、④手掌を使った胸郭の柔軟性および痰の貯留部位の確認方法、⑤体位ドレナージを行うための適切なポジショニング方法、以上の5点を教授した。その後、2学期が始まってからは、対象とする生徒に合わせて担任とともに上記内容において生徒の状況を評価し、必要な時には担任により体位ドレナージを行うようにした。 </p> <p>【結果】</p> <p> 担任による胸部の観察や呼吸面の評価、必要に応じた体位ドレナージを行うようにした結果、1回あたりの痰の喀出量が増加したという声や、1日の吸引回数が減少したという声が聞かれるようになり、授業時間の確保に繋がった。担任によって知識や技術の習熟度に差はみられるが、呼吸面の取り組みについて学校PTに直接助言を求める実例が増えてきた。 </p> <p>【考察】</p> <p> 痰の喀出量の増加や吸引回数の減少に繋がった要因として、教員らが医療的な知識を習得できる機会を設けることができたのはもちろんのこと、内部専門家として生徒の授業状況を実際に観察できていることで、生徒の身体面での評価や経時的変化を追いやすく、適切な体位ドレナージのためのポジショニングや吸引のタイミングなどを適宜助言・指導できるからではないかと考える。学校教育や学校生活についての理解がしやすく、教員と意見を交換できやすい立場にいる学校PTとして、今回実践した取り組みは生徒が学校生活を過ごしやすくするものだけでなく、授業時間を確保することより教育的効果の向上に繋がる有益な実践となった。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本発表においては、児童・生徒の個人情報保護に十分留意することや、発表の主旨、内容について学校長および明石市教育委員会に説明し、承認を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 63-63, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840535552
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_63
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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