小・中学校における肢体不自由児の体育授業参加への関わり ~合理的配慮提供に向けた理学療法士の役割分析~

DOI
  • 竹田 智之
    横浜市教育委員会事務局 学校教育企画部 特別支援教育相談課(横浜市特別支援教育総合センター)
  • 東城 真由美
    横浜市教育委員会事務局 学校教育企画部 特別支援教育相談課(横浜市特別支援教育総合センター)

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 小・中学校に関わる理学療法士 (以下PT)は、対象となる学校の特色やカリキュラム・マネジメントの状況等について理解をもちつつ、個別の指導計画の内容についても共有をした上で専 門性を発揮することが期待されている。横浜市教育委員会では、市特別支援教育総合センター所属のPTおよび、PT資格を有す る指導主事が、小・中学校における肢体不自由児の活動参加および環境設定、施設改修に向けたアドバイスを行っている。今回は、教育委員会のPTが外部専門職として小・中学校の肢体不自由児の体育の授業参加に関わった複数ケースに関して、具体的な困り感や対応、合理的配慮の提供に向けた合意形成への関わりの状況を分析し、小・中学校での持続可能な実践に向けて PTに求められる役割について考察することを目的とする。 </p> <p>【方法】</p> <p> 横浜市教育委員会において、2019年度から2022年度までに市 立小・中学校からの学校支援として要請があったケースのうち、体育や関連する行事等への参加が主訴であったケースを抽出し、その具体的な困り感と介入経過、および結果 (解決策)について分析をした。また、小・中学校の担任教諭や特別支援教育コーディネーター (以下CO)に対して半構造化面接を行い、PTに期 待する役割について分析をした。 </p> <p>【結果】</p> <p> 該当ケースは4年間で18件であった。困り感の内訳としては「 ①安全な運動方法、活動時間等について」18件、「②活動場所 までの移動について」11件、「③参加しやすい設定について」 15件、「④疾患に関する研修について」9件、「ラその他」5件であった。①は全ケースで困り感として挙がっており、学校が保護者や主治医から事前に確認している禁忌動作、耐久性についての再確認も多かった。②はプール学習時の移動における相談が多く、プールまでの動線やプールサイドでの移動、入水方法についての困り感が主となっていた。③は、運動会での徒競走の距離設定やダンスの隊形について、また体育での球技や器械体操等での課題分析、教具の工夫についての相談が多かった。 ④は当該児童生徒の疾患についての研修依頼であり、特にデュシャンヌ型筋ジストロフィーに関しての依頼が多かった。担任教諭やCOへの半構造化面接からは「①②④については以前よりPTの専門性に期待するイメージがあったが、③についても効果的なアドバイスがもらえることを知った」「②③について、児童生徒本人・保護者との合理的配慮に関する合意形成において、どの程度の配慮が必要なのかについてのアドバイスが活きた」等の結果が複数得られた。 </p> <p>【考察】</p> <p> 小・中学校においては肢体不自由教育の専門性の担保に関して センター的機能等でも対応がなされているほか、各自治体においてPTの専門性を活用する動きが少しずつ進んでいる。一方で、本研究では活動参加に向けた合理的配慮の合意形成においても、児童生徒の運動面のアセスメントや予後予測についての知見が必要な場面があることが示唆されている。こうした局面でPTが専門性を発揮し、客観的な知見を示す役割を担うことで合意形成が図りやすくなり、児童生徒の充実した学校生活に繋がる可能性があると考えられる。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>ヘルシンキ宣言に基づき関係者に対し本研究の主旨、個人情報保護を遵守することを口頭および書面にて説明し、承諾を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 66-66, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840536832
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_66
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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