Ponseti法による先天性内反足治療の中でマニピュレーションを理学療法士が担当した1症例

DOI
  • 堀川 廉
    千葉こどもとおとなの整形外科 リハビリテーション科
  • 宮原 侑希
    千葉こどもとおとなの整形外科 リハビリテーション科
  • 都丸 洋平
    千葉こどもとおとなの整形外科 リハビリテーション科
  • 西須 孝
    千葉こどもとおとなの整形外科 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 先天性内反足に対するPonseti法による治療は90%近くの症例で良好な成績が報告されており、足部の変形が強く残らない限り運動発達にも大きな支障をきたさないことが明らかとなっている。当院では、2年前より新生児に対するPonseti法治療の中で理学療法士 (PT)がマニピュレーションを行うとともにギプス固定の補助を担当する取り組みを行っている。本邦において PTが新生児期の内反足治療の中で役割を持つことは一般的ではないこともあり、渉猟した限り関連する報告はない。今回、 PTが介入した上で経過を追うことのできた最初の1症例について報告し、今後のPonseti法治療へのPT介入の意義と課題について検討する。 </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p> 症例は生後6日で右先天性内反足の診断を受けた男児である。重症度評価であるPirani scoreはmidfoot contracture score (MFCS)1.5、hindfoot contracture score (HFCS)3.0、total Pirani score (TPS)4.5であった。単純X線画像では、荷重時前後像にて距踵角(TC-AP) 15°、踵骨第5中足骨角(CM5-AP) - 3°、 側面像にて距踵角 (TC-L) 20°、踵骨第1中足骨角(CM1-L) 49°、最大背屈時の脛踵角 (TiC:DF)83°であった。マニピュレーシ ョンでは、一方の手で踵骨には触れないように距骨頭外側を支点とするよう把持し、もう一方の手で足趾と中足骨を把持し、踵骨に対して前足部を回外させた状態で他動的に外転方向へ1セット20秒間を目安として静的に伸長した。その際、舟状骨が距骨頭の前方をゆっくりと外転し、踵骨が立方骨に押され距骨頭の下で外転するように促した。これらは経験豊富な医師の指導の下で行われた。また患児が十分に安心できる環境で実施できるように、適時母親による抱っこなどの時間を取るように配慮した。マニピュレーション20分間とギプス固定を週1回のペー スで7回実施し、その後アキレス腱皮下切腱術が施行され、デニスブラウン装具着用へと移行した。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> 生後約12ヵ月の時点でPirani scoreはMFCS 0、HFCS 1.0、 TPS 1.0、単純X線画像はTC-AP 34°、CM5-AP 30°、TC-L 21°、 CM1-L 8°、TiC:DF 79°と改善が見られ、動作はつかまり立ちが可能となった。その後、21ヵ月時点の評価においては歩行 ・走行・しゃがみこみ・両足ジャンプが可能であり、膝過伸展や尖足などの異常歩行は見られなかった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 一般診療所においては、医師の多忙な診療の中でPonseti法におけるマニピュレーションに十分時間をかけられないという側面がある。そのような中において、PTの介入は患者側と医療者側の双方にとって有益である可能性がある。今後は、PTがマニピュレーションを担当した際に、医師と同等の治療成績が得ら れるかということについて、症例を重ねて検討する必要がある。またその中で考慮すべき点として、内反足の再発リスクに関し てはデニスブラウン装具が正しく着用されないことが最も大きな要因であることが報告されている。よって、装具着用のコンプライアンス遵守に関しても、機能評価と合わせたPTによるサポートが必要であると考えられた。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>ヘルシンキ宣言に基づき、保護者には本発表の目的と意義について十分に説明し同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 69-69, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840538240
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_69
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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