ドルフィン・アシステッド・セラピーの効果~10、18番染色体異常症10歳男児の症例を通じて~

DOI
  • 石田 輝也
    医療法人社団のびた みくりキッズくりにっく 医療型特定短期入所まんまる
  • 高橋 咲希
    医療法人社団のびた みくりキッズくりにっく 医療型特定短期入所まんまる
  • 本田 真美
    医療法人社団のびた みくりキッズくりにっく 医療型特定短期入所まんまる

抄録

<p>【はじめに】</p> <p> ドルフィン・アシステッド・セラピー (以下、DAT)は動物介在療法に水治療法、環境療法、家族療法の要素を取り入れ、身体 ・精神面での治療を目的とする。今回、所属法人と健康科学財団の共催で3泊4日のDATキャンプを沖縄県国頭郡で開催し、計5組の家族が参加した。その中での1症例について、理学療法士の視点から考察し報告する。 </p> <p>【方法】</p> <p> 期間:2023年7月14日~17日 対象: 10、18番染色体異常症と大動脈弁・僧帽弁狭窄症に対する弁置換術後の10歳男児。運動機能としては装具使用下での介助歩行が可能だが、自立した立位はできず、日常的には介助での車椅子移動。認知コミュニケーション面では、喃語やハンドサインを通じて表出が可能だが不明確。単語の表出不能。 評価:イルカキャンプ前に事前評価 (GMFM、KIDSスケール、感覚プロファイル)を行い、DAT前後での姿勢、DAT介入中の身体面と認知面の様子を記録し、口頭での家族インタビューと紙面によるアンケートを実施。介入内容:1日目と4日目はそれぞれ1回、2日目と3日目は午前午後1回の2回で計6回のDATを実施。1回あたりDAT時間は約45分。対象児家族から、『児一人で何かを達成してほしい』『イルカに乗ってほしい』という要望を得たため、医師、看護師、PT、OT、ST、臨床心理士とイルカトレーナーで協議し、最終的にイルカの腹の上に乗って移動することを目標とした。DATではイルカ及び海と水に慣れるところから始め、段階的にイルカに触れることや模倣などの活動を増やし、海中での介助量を下げ、実施する場所も海中に設置された台の上から、足のつかない場所へと移行。DATに加え、屋内プールを使い、防御的な過緊張を緩和するように介助泳ぎや水中での歩行練習も実施。 </p> <p>【結果】</p> <p> 5セッション目のDATにおいて、移乗介助した上で児単独でイルカの腹の上に乗り、10m程度、海上を移動することが出来た。またDAT後における数値面での粗大運度機能の変化はなかったが、姿勢面では座位と介助立位の両方で体幹の正中性が保たれやすく、四肢屈曲での固定も緩和され、運動面でもイルカに会える場面ではしゃがみ込むことなくスムーズな介助歩行が出来ていた。認知面で最初はイルカから臆病に身を引いていたが、DAT後半では、能動的にイルカに触れ、笑顔を見せ、ジャンプなどの行為に拍手をするようになった。 </p> <p>【考察】</p> <p> DATでは、イルカという生態、海の中という特殊な環境に児を参加させることで、これまで動物介在療法での目的とされていた心理療法としての側面だけでなく、外的感覚入力につながることで身体機能面にも大きな影響・効果があると考えられる。また家族へのインタビューでは、『出来ないと決めすぎていた部分がある』と両親から発言があり、今後の生活や活動の幅を広げるという点では家族療法の意味も大きかった。そのため今回のDATを通して、運動療法としての効果を数値的に結びつけることや環境設定の難しさには課題があるが、内容には大いに期待ができると感じた。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本発表はヘルシンキ宣言に基づき、患者の個人情報とプライバシーの保護に配慮し、家族から書面にて同意を得ました。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 73-73, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840540032
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_73
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ