薬剤治療を受けた脊髄性筋萎縮症患児の運動機能の変化 ―薬剤治療は理学療法目標を変化させるー

DOI
  • 長谷川 三希子
    獨協医科大学埼玉医療センター リハビリテーション科
  • 塚本 栞
    獨協医科大学埼玉医療センター リハビリテーション科
  • 齋藤 潤孝
    獨協医科大学埼玉医療センター リハビリテーション科
  • 北島 翼
    獨協医科大学埼玉医療センター 子どものこころ診療センター―
  • 井上 建
    獨協医科大学埼玉医療センター 子どものこころ診療センター―
  • 大谷 良子
    獨協医科大学埼玉医療センター 子どものこころ診療センター―
  • 荒川 玲子
    国立国際医療研究センター 病院臨床ゲノム科
  • 作田 亮一
    獨協医科大学埼玉医療センター 子どものこころ診療センター―
  • 齋藤 加代子
    東京女子医科大学病院遺伝子医療センター ゲノム診療科
  • 上條 義一郎
    獨協医科大学埼玉医療センター リハビリテーション科

抄録

<p>【緒言】</p> <p> 近年、脊髄性筋萎縮症 (spinal muscular atrophy:以下SMA)は薬剤治療が可能となり、特に乳児型の運動機能を大きく改善させる。そのため、理学療法は運動機能の促進を目的に介入する必要がある。しかし、実臨床におけるアウトカムやマイルストーンは明らかになっていない。本研究は、薬剤治療後の運動機能の変化について調べた。 </p> <p>【方法】</p> <p> 対象は、薬剤治療を開始・または実施後2年以上経過し、当院で運動機能評価を年に1度以上実施しているSMA患児16名である。運動機能評価はChildren’s Hospital of Philadelphia Infant Test of Neuromuscular Disorders (CHOP INTEND)、 Hammersmith Functional Motor Scale Expanded (HFMSE)、 Hammersmith Infant Neurological Examination Section2、 WHO Motor Milestones、Motor milestone levelsを用い、この中から、Head controlからWalkingまでの12項目 (結果に示 す)をマイルストーンとした。マイルストーンの獲得の有無で、 ①治療開始時期、②CHOP INTENDとHFMSEを初回 (治療前もしくは当院初診)/1/2/3年後で比較した。それから③ SMN2 コピー数 (2/3コピー)でマイルストーンの獲得率を比較した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 対象の年齢は3歳0か月 15歳3か月 (5歳4か月)〔最小‐最大 (中央値):以下同様に示す〕、Ⅰ型15名、Ⅱ型1名、 SMN2 コピー数は2/3コピー7/9名、治療開始はⅠ型が0-116 (10.5)か 月、Ⅱ型が26か月、観察期間は2年1か月‐7年2か月 (4年1か 月)、治療薬剤はヌシネルセン8名、オナセムノゲンアベパルボベク2名、ヌシネルセン後オナセムノゲンアベパルボベク6名であった。マイルストーン獲得有/無は13/3名、①治療開始月齢は、有で0‐29(8)か月、無で17‐117 (63)か月であった。②マイルストーン獲得有のCHOP INTENDは、初回/1/2/3年後が38/51/56/57点 (中央値:以下同様に示す)で、1年後以降は 50点を超えた。無は、7/17/24/30点であった。マイルストーン獲得有のHFMSEは、初回/1/2/3年後が3.5/12/13/19.5点と上昇を示し、無は、0点で変化がなかった。③マイルストーンの獲得率 (%) (2/3コピー)は、高い順にHead control(100/100)、Rolling(100/100)、Sitting(80/100)、 Pivot sitting (60/88)、Sit to lying (60/88)、Shuffling (60/75)、その後2コピーはStanding with assistance(60)、Lying to sit(40)、3コピーはLying to sit(75)、Crawling(63)、Standing with assistance(38)、 Hands-and-knees crawling(38) 、 Standing(13) 、Walking(13)であった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 今回、薬剤治療後のSMA患児が新たなマイルストーンを獲得する可能性を示した。そのマイルストーンは定型発達とは異なる SMAの特殊性を示すこと、獲得順序が SMN2 のコピー数により異なること、CHOP INTENDが50点以上でマイルストーンが獲得される可能性あることが示唆された。一方、CHOP INTENDが40点未満ではマイルストーンの獲得には至らず、先行研究と一致している。しかし、薬剤治療により、年々スコア の上昇を認め、四肢・頭部・体幹の自発運動の向上が示された。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p></p> <p>【倫理的配慮・説明と同意】</p> <p> 本研究は獨協医科大学埼玉医療センター臨床研究倫理審査委員会の承諾を得て行い、保護者に書面を用いて研究内容と方法を説明した (研究番号20140)。 </p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 76-76, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840542080
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_76
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ