メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー児に対して,関節拘縮と脊柱側弯の予防が重要と感じた2症例

DOI

抄録

<p>【はじめに】</p> <p>メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー (MN-CMD)は本邦では稀な疾患であり,筋力低下,関節拘縮,脊柱側弯,呼吸障害といった臨床症状があり,理学療法が介入すべき点は多いが,症例数が少ないこともあり本法の理学療法に関する報告は少ない.今回MN-CMD児を2例担当したため身体の経時的変化および理学療法の経過を報告する. </p> <p>【症例報告および経過】</p> <p> 症例1:8歳女児.出生時CK23340IL/L.関節拘縮を認め1歳か ら理学療法開始.1歳半で頸定,寝返りは頸部の反り返りで可能. 2歳でお座り可能.2歳6ヶ月から骨盤帯長下肢装具 (HKAFO)使 用で立位訓練を開始.膝屈曲拘縮進行予防のため膝装具を作成. 4歳でずり這い,座位でのいざりが可能となったが,座位での非 対称性姿勢が出現.両下肢の屈曲拘縮が進行し腹臥位保持や立 位訓練が困難となったため筋腱解離術を施行.自宅で装具等の使用ができず6歳で下肢屈曲拘縮が悪化し再手術.進学に伴い電動車椅子を作成.7歳で脊柱側弯の進行に伴い座位保持が不安定となりコルセットを作成,同時期に頸部の不安定感が出現.現在のROMは両下肢に屈曲拘縮が軽度,四 肢近位筋のMMTは2 レベル.胡座は不安定であり介助.脊柱側弯はcobb28.3°左凸.呼吸機能検査は正常範囲.知的発達は正常. 症例2:5歳女児.出生時CK41770 IL/L.筋緊張低下,下肢屈曲拘縮を認め3ヶ月より理学療法開始.5ヶ月で頸定.1歳で寝返 り,お座り可能.1歳6ヶ月からHKAFO使用で立位訓練を開 始.膝屈曲拘縮進行予防のため膝装具を作成.2歳で両下肢の屈曲 拘縮が悪化し腹臥位保持や立位訓練が困難となったため筋腱解離術を施行.2歳6ヶ月からHKAFO使用で歩行訓練を開始. 4歳で腹臥位で頭部挙上保持が可能.自宅で装具等の使用ができず 4歳6ヶ月で拘縮が悪化し再手術.5歳でずり這いが可能.現在のROMは両下肢に屈曲拘縮が軽度,四肢近位筋のMMTは 2~3レベル.胡座は自力で可能.脊柱側弯の兆候はなし.呼吸機能検査は未測定.知的発達は未評価だが低下を疑う所見はなし. </p> <p>【結果】</p> <p>2症例ともに両下肢の腸腰筋,ハムストリングス,長 母指屈筋に短縮を認めた.関節可動域制限がなければ腹臥位や装具使用での立位訓練が可能であった.筋腱解離術によって関節拘縮は改善するが,自宅での姿勢ケアが行えず,2例とも関節拘縮を再発した.下肢拘縮進行予防のために自宅での装具等の使用や腹臥位の保持時間が重要であったが,自宅で姿勢ケアを行うための工夫が必要であった.症例1では脊柱側弯を認め,症 状の進行とともに一度獲得した座位が自力ではできなくなった. </p> <p>【考察】</p> <p>2症例ともに背臥位や胡座で過ごす時間が多く膝屈曲位を好む傾向にあり,姿勢と拘縮の関連が示唆された.関節拘縮によって腹臥位や立位の姿勢をとれなくなるため,拘縮予防および発達支援を目的に早期からの理学療法介入と姿勢ケアが重要であると考える.生命予後の一因となる呼吸障害予防のためにも,関節拘縮と脊柱側弯の予防のための姿勢ケアは重要であり,理学療法介入が果たす役割は大きいと考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>演題発表に関連し,開示すべきCOI関係にある企業などはありません.</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 81-81, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840545280
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_81
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ