気管切開術後の在宅呼吸リハビリテーションによりwell beingが向上した福山型先天性筋ジストロフィーの1例

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 福山型先天性筋ジストロフィー(Fukuyama congenital muscular dystrophy: FCMD)は20歳頃に呼吸器感染症などで死亡する例が多く、人工呼吸管理中の成人症例に対する長期的な呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の効果を示した報告は少ない。今回、誤嚥性肺炎を契機に20歳で人工呼吸管理となった FCMDに対し在宅呼吸リハを行った結果、well beingが向上した1例を報告する。 </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p> 本症例は21歳女性、身長: 133cm、体重: 35kg、生後まもなく FCMDと診断された。知的発達の遅れは軽度で意思疎通は良好、頭部保持は可能も、独座は困難で電動車いすで移動していた( 機能障害度分類: Stage VIII)。 2021年8月、初発の誤嚥性肺炎による入院を契機に在宅呼吸リハを開始した。同年12月、嘔吐後の誤嚥性肺炎の際に経口挿管となり、離脱困難のため気管切開、人工呼吸管理となった。約 1ヶ月の入院後、在宅人工呼吸、機械的排痰補助(Mechanical Insufflation-Exsufflation: MI-E)が処方され自宅へ退院した。退院時のMI-E設定は呼気圧: -20cmH2O、呼気時間: 1.5秒、吸気 圧: 20cmH2O、吸気時間: 1.5秒であった。本人は発声再獲得と祭りへの参加を、家族は発声再獲得と人工呼吸離脱を希望し、退院翌日より在宅呼吸リハを再開した。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> MI-Eに対する本人の拒否が強く、退院後1ヶ月間はバックバルブマスク(Bag valve mask: BVM)を使用し排痰と最大強制吸気量 (Maximum insufflation capacity: MIC)の改善を図り、退院2ヶ 月後には日中6時間の人工呼吸離脱が可能となった。スピーチカニューレへの変更を目標に吹き戻しを使用した呼気延長や息止め練習、BVMとMI-Eを使用したMICの拡大を行った。退院8ヶ月後にスピーチカニューレの練習を開始し、吹き戻しは5秒、単語レベルの発話で同室内でのみ聴取可能な程度の声量があった。退院10ヶ月後にスピーチカニューレでの外出が可能となった。 退院10ヶ月後では、BVMを使用した換気では500ml程度の一回換気量(tidal Volume: Vt)が得られたのに対して、退院時の MI- E設定ではVt: 330ml、咳嗽時最大呼気流量(Peak cough flow: PCF): 85L/minと肺機能改善に対してMI-E設定が不十分となっ た。そのためPCFとMICの改善を目的に、呼気圧: -35cmH2 O、呼気時間: 1.5秒、吸気圧: 30cmH2O、吸気時間: 2.0秒に MI-Eの設定を変更した。変更後はPCF: 116L/min、Vt: 720mLまで改善した。また、同時期より容積式吸気訓練器を使用して開始した努力吸気練習では一回吸気量は300ml程度であった。退院12ヶ月後では一回吸気量450ml程度まで改善し、14秒の吹き戻し、長文レベルの発話や歌唱が可能となった。また、排痰練習を継続し、スピーチカニューレ装着下の自己喀痰が可能となった結果、MI-Eを携帯せずに外出が可能となった。退院 12ヶ月後には2泊3日の旅行が可能となり、1年3か月後にはスピーチカニューレ装着下で祭りへの参加が可能となった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 人工呼吸管理中の成人FCMDに対する長期的な呼吸リハは肺機能や排痰能力を改善し、患者と患者家族のwell beingの向上に寄与する可能性がある。FCMDへの在宅呼吸リハは、個々の課題に合わせた対応と継続的な評価と介入が重要である。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本報告は患者の保護者へ本発表の趣旨、内容について文書および口頭にて十分な説明を行い、書面にて了承を得た。 </p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 83-83, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840546432
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_83
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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