デュシェンヌ型筋ジストロフィーマウスに対するiPS細胞由来筋幹細胞移植と筋収縮トレーニングの併用効果
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- 竹中(蜷川) 菜々
- 京都大学iPS細胞研究所
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- 後藤 萌
- 京都大学iPS細胞研究所
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- 吉岡 クレモンス紀穂
- 京都大学iPS細胞研究所 京都大学大学院 医学研究科理学療法学講座
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- 三木 麻有甫
- 京都大学iPS細胞研究所 京都大学大学院 医学研究科理学療法学講座
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- 櫻井 英俊
- 京都大学iPS細胞研究所
抄録
<p>【はじめに、目的】</p> <p> デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィン蛋白(Dys)が欠損することで、筋萎縮と筋力低下を引き起こす遺伝性筋疾患の一つであり、未だに根治療法はない。そこで、 Dys発現が正常な筋幹細胞(MuSC)を移植してDys発現を補う 「細胞移植治療」が、新たな根治療法の一つとして期待されている。当研究室では、健常ヒト多能性幹 (iPS)細胞から MuSC(iMuSC)を作成することに成功し、さらに、それらの iMuSCをDMDマウスへ移植すると、一部の筋線維でDysが補充されることを証明した (Zhao et al., 2020)。しかしながら、移植されて生着したiMuSCが、筋損傷などの刺激に応答して活性化し筋再生に寄与するという「幹細胞としての機能」を、ホストDMD筋組織中でも維持しているのかは不明であった。また、運動機能の改善を達成するためには、約10-30%の筋線維に Dysを補充する必要があることはすでに分かっているが、 iMuSC移植単独でその補充率を達成することは極めて難しい。そこで、本研究では、iMuSC移植の前後にDMD筋に対してトレーニングを負荷して筋再生を誘発することで、生着後の iMuSCの再活性化を促し、その結果としてDys補充率をさらに増大させられるか検証することを目的とした。この成果は、トレーニング負荷がDMDマウスに対するiMuSC移植治療を促進しうる有効な介入手段であることを証明し、それと同時に、 iMuSCの幹細胞としての機能を証明することにもつながる。 </p> <p>【方法】</p> <p> DMDマウスの後肢に等尺性収縮トレーニング (Tr)を負荷し、その24時間後にiMuSCを腓腹筋内に直接投与した。さらに、移植 2週後には再度Trが1回 (移植後1回Tr群)、もしくは、週に一回の頻度で4回 (移植後4回Tr群) 負荷された。Tr肢の反対側肢には、移植後Trは負荷されず、対照 (control)群として比較検証実験に使用した。Trは、麻酔下のマウス下腿後面に、足関節底屈最大トルク値の40%の力を発揮するように調整した電気刺激を 50回加えることで負荷された。移植5週後には筋組織を回収し、 Dys陽性線維及び損傷筋線維を検出するための組織学解析を実 施した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 移植後1回Tr群は、control群と比較してDys陽性線維数が増加する傾向にあったが、統計学的有意差は認められなかった。しかしながら、移植後4回Tr群では、control群と比較して有意に Dys陽性線維数が増大していた。また、Trにより、Dys陰性線維では損傷が惹起されたが、一方で、全てのDys補充筋線維は損傷を受けていなかったことが確認された。 </p> <p>【考察】</p> <p> iMuSC移植後の繰り返しTr負荷により、Dys補充率が有意に増大することが示された。この結果から、iMuSCは、少なくとも移植後4週間は「幹細胞としての性質」を維持している可能性が示された。さらに、DMDマウスに対するTr負荷は、iMuSC移植によりDysが補充された筋線維を損傷することなく、移植治療を促進させうる有効な介入手段であることも証明された。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は京都大学動物実験委員会の審査を受け実施した(承認番号:計23-196)</p>
収録刊行物
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- 小児理学療法学
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小児理学療法学 2 (Supplement_1), 86-86, 2024-03-31
一般社団法人 日本小児理学療法学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390018198840548352
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- ISSN
- 27586456
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可