児童における健康関連QOLと食に関するQOL・睡眠状況の学年別の違いと項目間の関係 ―福島子どもコホート調査―

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 近年、食育や眠育などの言葉が聞かれるように、小中学生のうちから、健康に気を付けることの重要性が見直されており、食育、眠育などの多角的な調査が、将来的なけがや生活習慣病の予防のために必要である。対策の一環で、福島市をはじめ全国の市町村で予防的な政策が始まっているが、医療専門職の関りは少ない。地域の小中学生を対象に健康に関連する多角的な調査を行うことで、学年ごとの違いや項目間の関係性が明らかになれば、有用な予防的な関わりが実施できる。 本研究では、「福島子どもコホート調査」として福島市在住の小学生の健康関連QOLや食に関するQOL、睡眠状況の調査を行い、学年ごとの違いや項目間の関係性を明らかにすることを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> 本研究は横断研究とし、福島市内の全小中学校の児童、生徒に募集チラシを配布し、対象者を募集した。75名が参加し、分析対象者は、データ欠損のある者、中学生、療育利用者を除外した53名の児童 (6~12歳)とした。 測定項目は、こどもの健康関連QOL、食に関する主観的 QOL、 睡眠調査とした。こどもの健康関連QOLは、日本語版 KIDSCREEN -27を用いた。KIDSCREEN -27は、身体的幸福感、心理的幸福感、親子関係と家庭環境、社会的支援と仲間、学校 の5領域、計27項目からなり、5段階で回答し、高得点であるほどQOLが高い。今回は、親子関係と家庭環境を除く4領域を採用した。食に関する主観的QOL (SDQOL)は、4項目計4~20点で採点し、高得点であるほどQOLが高い。睡眠調査は、小学生版子どもの眠りの質問票を用いた。質問票は、レストレスレッグズ症候群、 睡眠時呼吸障害、朝の症状、夜間中途覚醒、 不眠、日中の過度の睡眠、日中の行動、睡眠習慣、不規則・睡眠相後退の9つの下位項目で構成され、高得点であるほど睡眠状態が悪いことを表す。また、付随項目としてテレビや動画、ゲームなどのスクリーンタイムの1日の平均時間を聴取した。対象を学年によって低学年 (1、2年生24名)、中学年 (3、4年生 20名)、高学年 (5、6年生9名)の3群に分類し、一元配置分散分析とBonferroni法による多重比較検定にて検討した。また、全対象者で項目間の関係性をPearsonの相関係数にて検討した。統計処理にはIBM SPSS Statistics Ver.27を使用し、有意水準を 5%とした。 </p> <p>【結果】</p> <p> 低学年と比べて高学年において、睡眠習慣が有意に低く (p= 0.041)、スクリーンタイムが長かった (p=0.033)。SDQOLは、中学年と比べて高学年が低く (p=0.040)、KIDSCREEN -27の各項目は、学年間に差はなかった。 年齢はスクリーンタイムと0.434の正の相関、睡眠習慣と- 0.344の負の相関があり、SDQOLと相関はなかった。 KIDSCREEN -27はSDQOLと0.313~0.588の正の相関、日中 の行動と-0.357~-0.586の負の相関があった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 今回、スクリーンタイムと睡眠習慣に相関関係はないが、低学年と比べ高学年の児童の方が、スクリーンタイムは長いが睡眠習慣は自立していた。KIDSCREEN -27とSDQOL、日中の行動との相関から、こどもの健康関連QOLが高いと、食事に関する QOLが高く、睡眠に関わる日中の行動 (問題行動)が少なくなる可能性が示唆された。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は福島県立医科大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。対象者には口頭と文書にて説明し、同意を得て実施した。本研究への協力を断っても、何ら支障のないことを書面にて伝えた。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 89-89, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840550912
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_89
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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