失調症状を呈する小脳炎患児に対し、急性期から外来までの集中的な介入にてADLの改善ができた症例

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 小脳炎に対するリハビリテーション介入は、併存する無言症に対しての言語聴覚療法介入が散見される程度で、理学療法介入の効果や経過報告は乏しい現状にある。今回、発症早期から無言症に加えて失調症状を呈している症例に対し、基本動作練習 ・バランス練習などの理学療法や家族に対するセルフトレーニング指導を行うことによって自宅退院可能となり、外来リハビリテーションの継続によって保育園に通園再開できるADLを獲得することができたため報告する。 </p> <p>【症例紹介】</p> <p> 症例は5歳女児。X-3病日に39度の発熱と嘔吐を認め、X-2病日に発熱が持続し、腹痛が出現したため前医を受診された。X病日、朝と夜間に同様の発作があり前医にて痙攣重積発作と診断され、当院へ転院となった。採血結果は軽度炎症反応の上昇を認めた。頭部MRIにて両側中小脳脚、脳梁膨大部に拡散強調像高信号が認められ、小脳炎と診断された。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> X+1病日から3日間のステロイドパルス療法が開始され、X+5病日には上半身を起こす程度の自動運動が可能となったが、コミュニーションは首振りでYes/Noによる表出のみ可能であっ た。X+6病日に理学療法評価を開始した。無言症を呈しており、興味関心のある話題をもとに関係性を作りながら実施した。身体機能では、筋力は体幹屈曲MMT:2、頭頚部屈曲MMT:3と低下を認め、Scale for the assessment and rating of ataxia (SARA): 28点と運動失調を認めていた。ADLはWeeFIM:47 点 (運動22点、認知25点)であった。X+9病日より歩行練習を 開始したが、独歩では上肢の筋緊張が高く、後方重心、股関節周囲の動揺が認められた。そのため理学療法以外の時間にも膝立ち姿勢で遊ぶことや膝歩きなどを家族指導しセルフトレーニングを導入した。X+10病日に歩行器歩行30mが見守りにて可能になった。X+12病日にはSARA:14.5点と失調症状の改善を認め、X+13病日に10m歩行自立 (10’81秒)、階段昇降も手す りを使用し見守りで可能となった。WeeFIM:92点 (運動60点、認知32点)と改善を認め、X+14病日に自宅退院となった。退院後も週2回の外来リハビリテーションを継続し、X+25病日には保育園へ通園再開となり、X+27病日に10m歩行が8’35秒、 家庭内で自発話も増えるなど無言症の改善を認めた。X+34病日に外来でのリハビリテーションが終了となった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 今回、失調症状を呈した小脳炎患児に対して理学療法と家族指導を行い、急性期から外来までの集中的な介入にてADLの改善を図ることができた。小脳炎においては運動失調や無言症を合併することもあり、経時的な評価を効果判定に理学療法介入することや小児理学療法実施中は本人に加えて家族への指導が重要と考えられる。また小脳炎後の機能低下においては遷延することも報告されており、退院後のフォローアップが重要と考えられる。本症例においても入院中から家族に対してのセルフトレーニング指導を行い、外来移行後も継続的に介入をすることができたことがADL改善に寄与したと考えられる。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>ヘルシンキ宣言にもとづき、保護者に対し症例報告の目的、公開方法、協力と取り消しの自由、個人情報の管理について説明した。その後、保護者より発表を行う同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 94-94, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018198840553856
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_94
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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