胸髄損傷を呈する幼児に対する、課題志向型トレーニングの実践

DOI

Search this article

Description

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 今回、胸髄損傷を呈した幼児の「杖で立てるようになりたい」などの目標達成にむけた実践の機会を得た。そこで、残存機能を生かし、目標を達成する為、課題志向型トレーニングの実施を検討した。二分脊髄・脳性麻痺児に対する課題志向型トレーニングは活動・参加レベルでの効果が報告されている為、肢体不自由及び、慢性的に症状が継続するという共通点がある胸髄損傷児においても有効と考え、特にCognitive Orientation to daily Occupational Performance (CO-OP)を参照し、介入効果を考察することを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> 5歳3ヶ月女児、第4~5胸髄損傷。ASIAはグレードA、介入頻度は、2~3回/月 (40分/回)であった。 目標設定のために児・母と面接評価を実施した結果、①両杖を用いた立位保持時間 (初回時目標は12秒)、母のニードであるセルフケアの意識づけとして②傷の確認、③ストレッチ (②・③ 初回時目標は1ヶ月に16回)の3点を目標とした。加えて、目標達成スケーリング (GAS)を用いて児・母と目標の明確化・段階づけを行った。①立位保持時間は9回の介入を実施し、②傷の確 認・③ストレッチの実施は3ヶ月間自宅内で実施・記録した。 CO-OPの特徴である、認知ストラテジーの使用、ガイドされた発見、可能化の原理を基盤とした関わりを実践し、児の問題解決スキルの促しを行った。 遂行の質評価は、遂行の質評定スケール (PQRS)および時間・回数を記録した。加えて、立位保持時間に関しては、CO-OP実施前後の変化を視覚分析によって正の介入効果が推論された場 合にNon-overlap of All Pairs (NAP)を用いて効果量を測定した。 </p> <p>【結果】</p> <p> GASの変化は①立位保持時間、②傷の確認、③ストレッチの実施の全てにおいて-2から+2へ変化した (Tスコアは74.5点)。立位保持時間は介入前後でPQRSが1点から10点、時間が6秒から517秒と変化した。またNAPによる効果量は1.00 (SE=0.03, 95%CI [1.00, 1.00])であった。傷の確認・ストレッチの実践は PQRSが1点から10点と変化し、実施回数は1回から18回と変化した。 </p> <p>【考察】</p> <p> CO-OPは自己効力感を促進するという報告がある。加えて、自己効力感が身体活動量の増加に影響を及ぼすとの報告もある。立位保持の実践では、児が主体的に取り組み、児自身の認知ストラテジーの使用による問題解決が出来たことで自己効力感を得たと考えられる。また、保護者より「訪問リハビリ時の立位練習を意欲的に取り組むようになった」「食事・余暇時に立位台で過ごしたいと言うようになった」との発言も聞かれた。以上より、本症例に対する介入は、自宅内における立位での活動を促し、立位保持時間の増加に繋がったと考えられる。 傷の確認・ストレッチの実践では、保護者が自宅内でCO-OPの関わりを実践できたことに加え、実際の生活場面で実施したことで、問題解決スキルを促進し、目標達成に繋がったと考えられる。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本症例は未成年であり、保護者に本報告の説明を行い、書面及び口頭にて同意を得た。</p>

Journal

Details 詳細情報について

Report a problem

Back to top