カンフーマスターの老い
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- 雑賀 広海
- 日本学術振興会特別研究員PD
書誌事項
- タイトル別名
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- 『ライジング・ドラゴン』におけるスター・イメージの再創造
抄録
黄金期が過ぎた香港映画では、監督や俳優の高齢化が産業の衰退との関連で問題視されてきた。しかし、香港人アイデンティティが1970年代ごろから定着しはじめたものであれば、老いた香港人は2000年代以降に描かれはじめた新しいイメージである。とりわけ身体を酷使するカンフー映画のアクション俳優にとって、老いはスター・イメージの維持において否定的に作用しやすい。本論文は黄金期香港映画を代表するアクション・スターのジャッキー・チェンをとりあげる。1990年代までの彼は若く健康で強靭な身体を誇示していたが、2000年代以降は老いの演技を実践しながらCGIをとりいれるようになる。これはアクション俳優としての退化ではなく、彼の演技が新たなモードにはいったことを示している。それは、1990 年代までの虚構に打ち勝つ実体的な身体イメージからデジタル映像をとりこみ生成変化する身体イメージへの移行であり、老いた彼の身体は柔軟なマスキュリニティを手にいれる。
収録刊行物
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- 映画研究
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映画研究 18 (0), 42-64, 2023-12-09
日本映画学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390018198840683648
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- ISSN
- 24239399
- 18815324
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可