無菌室入院中の血液腫瘍患者における予防的リハビリテーション対象者のスクリーニング

DOI
  • 瓜尾 柊
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部
  • 大隈 統
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部
  • 森本 貴之
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部
  • 大林 茂
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部 埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>無菌室入院中の血液腫瘍患者は、強力な治療や活動範囲の制約により身体機能の低下が生じるため、予防的な関わりが必要である。本研究は、無菌室入院中の血液腫瘍患者の静的安定性に焦点を当て、入院時の簡易的な評価指標から、予防的リハビリテーション対象者を明らかにすることを目的とした。 </p><p>【方法】</p><p>2021年1月~2022年11月までに当院の無菌室に入院した血液腫瘍患者187名を対象とした後方視的研究である。調査項目に欠損値がある例は除外した。調査項目は基礎情報、 Functional Balance Scale (FBS)、静的安定性とし、測定時期は入院時と退院時とした。静的安定性は、重心動揺計(aison社製 Gaitview AFA-50)を用いた開脚直立での外周面積とした。予防的リハビリテーション対象者を抽出するため、退院時の外周面積が入院時よりも維持・減少した群(減少群)と増加した群(増加群)に分類した。外周面積の変化についてWilcoxonの符号付順位検定、入院時の各調査項目をMann-WhitneyのU検定で比較した。また2群を従属変数、入院時のFBS下位項目を独立変数とした決定木で検討した。統計ソフトはIBM SPSS Ver.25を使用し、有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p>減少群は81例(43%)、増加群は106例(57%)であった。外周面積(入院時/退院時)の中央値(25-75%値)は、減少群が 132.8(100.5-221.0)/98.3(78.2-144.2)㎠、増加群が 113.0(76.4-157.5)/156.8(113.0-240.1)㎠であり、両群ともに 有意差を認めた(p<0.05)。年齢(減少群/増加群)の中央値は 58(45-83)/66(58-73)歳と有意差を認めた(p<0.05)。決定木では、段差踏み替え、立ち上がり、片脚立位保持を指標とした6群による予測法が算出され、決定係数は0.604であった (p<0.05)。外周面積の増加が予想される群は、段差踏み替えが 0点かつ立ち上がりが3点以下の群、段差踏み替えが1-3点かつ片脚立位保持が2点以下の群であった。 </p><p>【考察】</p><p>無菌室入院中の血液腫瘍患者においては静的安定性が低下する例が多く存在した。予防的リハビリテーション対象者は、下肢筋力とバランス機能が要因と考えられる入院時の段差踏み替え、立ち上がり、片脚立位保持の評価結果から抽出できる可能性が示唆された。これらの評価は特別な器具を必要とせず簡便に評価が可能なため、多施設・多職種での活用を推奨できると考えられた。ただし、今回の結果については、年齢の影響を含めた解釈が必要である。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、埼玉医科大学総合医療センター倫理委員会の承認を得て実施した (申請番号: 2022-102)。また、当院ホームページにて研究内容の公開を行い、オプトアウトの機会を設けている。</p>

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